「重症化の心配ない」「成長への影響不安」 函館でワクチン開始 小児接種迷う保護者 専門家「正しい情報入手を」

函館市の多田内科医院で、新型コロナのワクチンを接種する児童(桶谷駿矢撮影)

道内の自治体に先駆けて3日、函館市内で5〜11歳の子どもへの新型コロナウイルスワクチンの接種が始まり、接種を終えた子どもや保護者からは「重症化の心配がなくなった」「安心できる」との声が聞かれた。市は年齢の高い子どもから順に接種券を配布しており、4月中には全対象者に届く予定。ただ、接種を悩む保護者もおり、専門家は「正しい情報を入手した上で判断を」と呼びかけている。

専門家「正しい情報入手を」

「あまり痛くなかったので良かった」。3日夕、市内湯川町の多田内科医院で接種を受けた小学4年の女児(10)は笑顔を見せた。付き添った女児の母親(43)は「副反応が心配ですが、友達と遊びたがっていたので、ワクチン接種で感染の不安を少しでも取り除けたら」と話した。

市によると、市内の5~11歳の対象者は約1万1千人。2日までに12歳間近や基礎疾患があり優先接種を希望する子どもら約2千人に接種券を配布した。現在は、市内の11医療機関で予約を受け付けている。

同医院の多田智洋院長(45)は「感染拡大で運動会や修学旅行などの学校行事の中止が相次いでいる。(接種により)感染リスクを抑えることで行事ができるよう、解決のお手伝いができれば」。効果などについては「パンフレットを使って丁寧に説明している。接種を希望する人は安心して受けてほしい」と話す。

子ども対象のワクチンは、接種への協力を強く求める予防接種法の「努力義務」ではなく、打つ、打たないは各家庭で決める。ただ、接種を巡っては副反応などに不安を抱える保護者も多い。

5歳の長男がいる市内の会社員男性(39)は「すぐに重い副反応が出なくても、成長する中で影響が全くないのかどうか。不安があるうちは打たせたくない」と打ち明ける。福島県に住む祖父母に安心して子どもを会わせたい気持ちもあるが「少し様子を見ようと思っている」。

ワクチン接種の有無が、差別やいじめにつながる懸念もある。函館市教育委員会は2月25日付で市立小学校と幼稚園に対し、ワクチン接種に関する注意点などを通知。《1》差別が起きないよう注意する《2》児童の接種の有無や意志を確かめない《3》ワクチン接種のため出席停止になった児童について、その理由を他の児童に言わない―といった内容だ。市内小学校の男性教員は「接種が進めば、副反応などで学校を休む児童が増える可能性もある。どういう指導が必要か、見極めていかなければならない」と話した。

函館短大の藤井寿夫教授(発達心理学)は「ワクチン接種の有無は扱いが重要な個人情報」と強調する。学校側には徹底した情報管理が必要だと指摘し、保護者から相談を受けた場合は、公的機関を案内すべきだとする。また、今は小学生もSNSなどを閲覧するため、誤った情報や根拠のないうわさに惑わされる場合もあるといい、「保護者は効果や副反応について、国や保健所など公的な機関の情報を入手した上で接種を判断し、正しい情報を子どもにしっかり説明してほしい」と話した。

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