• 産後「訪問型」で支える 函館の助産師・笠原さん奮闘中

    浦巽さんが抱く長女を見て笑顔を見せる笠原視砂子さん(右)
    新型コロナウイルス禍で人との交流が制約を受ける中、自宅にこもりがちな産後の母親を訪問でサポートしている助産師がいる。函館市の「かさはら母乳育児助産院」の笠原視砂子(みさこ)さん(51)。訪問型に特化している助産院は市内でここだけで、連日、利用者からの連絡が絶えない。函館市も新年度、訪問型産後ケア事業を実施する方針で、母親らは支援の拡大を心待ちにしている。

    「今日は機嫌がいいね」。1月下旬の平日午後、函館市の弁護士浦巽(うらたつみ)香苗さん(37)の自宅。笠原さんは、浦巽さんが抱く長女(11カ月)を見てほほえんだ。浦巽さんは長女が生後1カ月のころから訪問を依頼し、母乳の飲ませ方について何度も相談。さらに月2回は、オンライン会議システムを使って交流している。浦巽さんは「うまく授乳できず、家で1人で泣いていた。コロナ禍で、子連れの外出は気を使う。来てくれるのはありがたい」と話す。

    笠原さんは函館中央病院での約20年の勤務をへて2016年に同助産院を開設。函館市や北斗市を中心に年間約300件の訪問依頼を受けている。料金は初回が90分5500円など。業務時間外の真夜中に「授乳がつらい」「子どもが泣きやまない」とメールや電話を受けることもある。新型コロナ流行後は特に「外出していないので、久しぶりに大人と話した」「頼れる人が1人もいない」といった相談が増えたという。

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    制約多いコロナ下 母親の孤立化防ぐ

    母親が集まる「子育てサロン」もコロナ禍で参加が制限される場合があり、笠原さんは「母親の孤立化が進んでいる。核家族化で、かつては同居家族や近所のおばさんに聞けたことも、誰にも相談できなくなった」と指摘する。

    こうした母親をサポートするため、函館市は15年度から、産後2カ月以内の母親を対象に、医療機関に宿泊して育児指導が受けられる宿泊型の産後ケア事業を実施。1泊7200円で、その後は1日ごとに3600円かかる。利用件数は20年度が17件、21年度は1月末現在で13件だった。

    ただ、苫小牧市や北斗市などが行っている訪問型の事業は、函館市では行われていない。苫小牧市では産後7カ月未満の母親を対象に1回1200円(1時間程度)で事業を実施。20年度は延べ594件の利用があったという。21年度から訪問型を始めた北斗市では、1月末までに延べ51件の利用があった。対象は産後1年未満の母親で、利用料は1回千円。以前から実施している宿泊型よりも、利用人数が多いという。

    函館市も新年度から、訪問型ケア事業を実施予定で、新年度予算案には訪問・通所型も含めた関連事業費として440万円を計上。内容を検討中だ。函館市の宿泊型ケアも利用したという浦巽さんは「宿泊型にも助けられたが、おむつなど必需品を持ち込むのが大変だった。訪問型の方がより多くの母親にとって利用しやすいと感じた」。笠原さんも「産後ケアは虐待防止にもつながる。支援が多くの自治体に広がってほしい」と期待している。(鹿内朗代)

    (2022年2月25日 北海道新聞朝刊掲載記事)

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