急病の子ども預かる自治体サービス 病児保育 道内でも拡大

旭川市中心部の病児保育室「まほうのちから」で保育士(右)と遊ぶ子どもたち。利用後はおもちゃを含め、室内を入念に消毒するという

急な発熱やインフルエンザなどで、保育所や小学校を利用できない子どもを預かる「病児保育事業」に取り組む自治体が道内でも増えています。民間施設や病院などに運営を委託しており、施設のスタッフが子どもを保育所に迎えに行くサービスを提供する施設も登場しています。一方で、地域によっては定員が少なく、「利用しづらい」との声もあり、受け皿の一層の拡大が求められています。

定員少なく「利用しづらい」の声も

「夕べは眠れたようですか」「熱はどう?」。旭川市の委託を受け、市内の社会福祉法人が昨年4月に開設した病児保育室「まほうのちから」。1月下旬の平日の朝、インフルエンザA型や、その疑いと診断された子ども5人が次々に訪れ、看護師が病状などを確認しました。

A型に感染した長男(4)を連れてきて、預けることができた母親(37)は「『キャンセル待ち5番目』と言われていたので、預けられるかハラハラした。受け入れてもらえてよかった」とほっとした表情を見せました。

定員は3人で、病気の感染を防ぐため、施設内は3室に区切られ、各室にトイレがあります。この日は利用希望者が多く、同じA型の子ども3人を同室にして、定員より2人多く受け入れることになり、預かってもらえました。仕事を休めず、以前は長男が体調を崩すと親に預けていましたが、「親にも感染することが多く、心苦しかった。本当に助かっている」と話します。

この施設では、道内初となる「お迎えサービス」も行っています。保育所で体調を崩した子どもを、看護師資格を持つ職員がタクシーで迎えに行き、医療機関を受診させ、施設へ連れてきます。ただ、こうしたサービスはありますが、施設そのものに空きがなく、利用を断ったケースもあります。今後の受け皿拡大について、旭川市は「体調不良の子どもは、本来は保護者が面倒を見るのが望ましい。市の財政事情もあり、利用実績を見ながら検討していく」(こども育成課)と現時点では増設に慎重な考えです。

病児保育は、保育所を運営する団体や医療機関が市町村の委託を受けて開設するケースが多いです。育児と就労の両立支援のため、国は近年、病児保育の運営費や施設整備費の補助を拡充させており、徐々に参入が増えてきました。

道によると、事業を実施しているのは2017年度に34市町51施設。事業拡充が盛り込まれた国の「子ども・子育て支援新制度」が始まった15年度からの2年間で8市町14施設増えました。預かる子どもの状況によって、急性期の「病児対応型」、回復期の「病後児対応型」、保育施設などで具合が悪くなった時の「体調不良児対応型」の3事業に分かれており、いずれも4、5施設増加しました=グラフ=。

ただ、地域性や施設の運営方針により、利用状況には差が生じています。病後児対応型事業を6施設で実施する札幌市は、定員が計24人と少ないため、利用できなかった子どもが17年度は約1300人に上りました。「拡大の必要性は認識しており、協力してくれる医療機関を探している」と市子ども未来局施設運営課。

一方、「病後児」「回復期」は決まった定義がなく、インフルエンザなどの感染症にかかった子どもについて、「熱が下がれば、隔離室で受け入れる」「他の子どもにうつる可能性が全くなくなるまで、一律に受け入れない」などと施設で対応が分かれており、後者の場合は利用が伸び悩んでいるといいます。

全国病児保育協議会(東京)の大川洋二会長は「『病後児対応型』は子どもの熱が下がった後、登園できるようになるまで預かるもの。本来は保護者が面倒を見るべきだとする考え方もあるが、保育と病気をしっかり理解したプロが見る方が子どもには望ましい。自治体は少子化対策の観点からも、子育てしやすい環境づくりに向けて、病児保育に積極的に取り組んでもらいたい」と話しています。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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