• 【最終回】#25|住宅の設計相談 依頼者の本心探って形に

    この連載に度々登場した築100年の馬小屋はこの夏、着工から3年半たちやっと事務所として使い始めました。まだ工事は途中でキッチンや照明、ストーブの取り付けを控えています

    「ステキな家をつくろう」
    札幌在住の建築家、三木万裕子さんが、古民家をリノベーションして〝わが家〟をつくったときに学んだアイデアやノウハウをつづるコラム。


    住宅の設計でご相談を受けていると「これは建築の相談と言うよりは、人生相談ではないか」と感じる場面が多くあります。住居の問題に直面するタイミングは人それぞれです。建築技術が進化し、社会の意識も変わり、中古住宅を改修して長く住み続けるなど、その時々で、取れる住宅の選択肢が多様化していることが背景にあると思います。

    ある方は、築30年の自邸の水回りの漏水や雨漏りに悩まされていました。バリアフリー化もそろそろ必要です。そこで、広い敷地を切り売りして資金を作り、庭側に建て替える方向性でご相談に来られました。このほかに、今の家を全面的に手直しして住み続ける、土地を全て売ってしまい別のエリアに新たに建てる―という大きく3パターンの選択肢が考えられました。

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    お話を聞いていくと、この数年、次々と老朽化による問題が発生し、都度場当たり的なリフォームが繰り返されてきたことが分かりました。今の家を直して住みよくなるのか?と懐疑的な気持ちが芽生えて、建て替えを第一候補に考えていたようです。実は相談者含めてご家族は皆、今の家や敷地に対する思い入れが強いと、話しているうちに分かってきました。

    リフォームで問題が解決されるなら、それが一番良い選択肢だとの結論に至りました。このように状況の複雑さゆえに、ご要望の奥に本心が隠れてしまっているケースは珍しくありません。そもそも要望がまとまっていないから相談にも踏み出せない、という方も多いのではと想像します。

    設計とは、単に与えられた条件を形にすることではなく、相談者とともに複雑な問題を解きほぐしながら、心から望む形を探っていくこと。住居は安心して心豊かに暮らしていくための礎であり、この仕事にやりがいを感じています。

    三木万裕子

    三木万裕子(1級建築士)

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    東京都内の建築設計事務所勤務を経て2013年に独立。「三木佐藤アーキ」を主宰し、建物のほか家具のデザインや製作も行う。札幌市内の古い農家の住宅を修復し、夫で建築家の佐藤圭さん、長男の千木(せんぼく)君と3人で暮らす。札幌市出身。

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