連載エッセー「ステキな家をつくろう」

#23|楽しく寒さ解消 80代で薪ストーブ導入

わが家のコンパクトな鋳物薪ストーブです。手入れに手がかかり着火にコツがいる分、うまく燃えた時の喜びも大きく、オーロラのような火に癒やされます(写真提供/三木万裕子さん)

わが家のコンパクトな鋳物薪ストーブです。手入れに手がかかり着火にコツがいる分、うまく燃えた時の喜びも大きく、オーロラのような火に癒やされます(写真提供/三木万裕子さん)

先日80代女性から「冬場、なんだか家が寒くて…」と電話で相談をいただき、お話を聞きに伺いました。

ご本人はとてもお元気で、30年前に建て替えたというご自宅はきちんと修繕、整頓され、生活を楽しんでいる様子がうかがえました。いろいろな選択肢を並べるなかで出た結論は、「私、薪(まき)ストーブを使ってみたい」。

薪ストーブは使いこなすにはコツがあり、掃除にも手間がかかるけど、火を起こすのは楽しいし、見て癒やされる。ストーブの上での煮炊きも楽しい。こうした私の体験談をお聞きになった上での決断でした。

単に寒さを解消するのであれば、もっと効率的で効果的な方法はあると思います。80代の女性が初めての薪ストーブを使いこなせるか、少々不安がありますが、同居する息子さんはアウトドアが趣味でサポートが得られそうです。私も夢の実現をお手伝いすることにしました。雪かきせずに薪を取りに行けるよう、薪置き場を玄関ポーチ内に作るなど、暮らしやすい導線を考えています。

高齢になるほど憂鬱(ゆううつ)な「冬が来る」を、楽しみに変えるために投資する。その感覚を80代の方がお持ちなのだと、感動しました。

最近、中高年の方から長引くコロナの影響とも言えそうな、相談が増えています。「ステイホームでそれまで目に付かなかった家の老朽化が気になるようになった」「老人ホームなど集団生活よりも、住み慣れた自宅で暮らし続けたいとバリアフリー化を考えるようになった」などなど。

皆さん共通する一番の願いは「安心して老後を過ごしたい」。不安の解消に留まらず、生きる喜びにつながるような建築を提案していきたいと思います。

三木万裕子さん

1級建築士

みき・まゆこ/東京都内の建築設計事務所勤務を経て2013年に独立。「三木佐藤アーキ」を主宰し、建物のほか家具のデザインや製作も行う。札幌市内の古い農家の住宅を修復し、夫で建築家の佐藤圭さん、長男の千木(せんぼく)君と3人で暮らす。札幌市出身。

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