連載エッセー「ステキな家をつくろう」

#17|実験的な家づくり 小さな失敗も味になる

塗り継ぎ跡が目立つ外壁です。味があると言うにはありすぎる気もしますが、自分たちは気に入っています

塗り継ぎ跡が目立つ外壁です。味があると言うにはありすぎる気もしますが、自分たちは気に入っています

やったことがないことを試す時や、ないものを作りだす時は必ずリスクが付きまといます。失敗してこそ大きく成長できるという面はありますが、建築の仕事においては相手がある以上、失敗は許されません。

そこで私たちは自宅を建築するときに、失敗する貴重なチャンスだと考え、たくさんの実験をしました。

一つは扉の取っ手です。扉は全てオリジナルに製作した木のドアノブを使用しています。ドアノブの軸は、既存のものを使おうと考えましたが、複雑な加工が必要なためにうまくいかず、ドアハンドル型の軸を使うことになりました。

結果、てこの力が働かず硬いドアノブになってしまいました。遊びに来た友人がトイレに入り、ドアが開けられず、「助けて!」と叫ばれたこともあります。しかし、子供が小さいうちは自分で部屋のドアを開けられず、ドアロックが不要という思わぬ利点もありました。

外壁の塗り壁を塗るのは、左官職人さんを講師として希望者を募り、ワークショップ形式で行いました。塗り切れなかった部分は自分たちで少しずつ塗り継ぎましたが、配合がまちまちになり、むらが出てしまいました。

また、重いモルタルを2階の足場まで持って上るのに疲れてしまったので、外壁の一部は木貼りに変更しました。「均一でない=汚い」「計画通りにいかない=失敗」という価値観が主流かもしれませんが、私たちは手で繕った感覚が出て気に入っています。

家づくりは高い買い物なので、失敗を恐れて保守的になってしまいがちです。大きな失敗でなければ工夫や気の持ちようで解決できるので、チャレンジすることをお勧めします。

三木万裕子さん

1級建築士

みき・まゆこ/東京都内の建築設計事務所勤務を経て2013年に独立。「三木佐藤アーキ」を主宰し、建物のほか家具のデザインや製作も行う。札幌市内の古い農家の住宅を修復し、夫で建築家の佐藤圭さん、長男の千木(せんぼく)君と3人で暮らす。札幌市出身。

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