教育資金、早めに準備 子どもいる世帯 家計どうする

子育てにはお金がかかると言われている。「大学を出るまでに○千万円が必要」と聞けば、若い世代が結婚や妊娠・出産をためらいかねない。また、親にとっては、老後の生活も気になるところだ。専門家は、家計を見直す際は、子どもと一緒に家族で話し合うことの大切さを指摘する。どうしたらいいのか、子育て費用について考えてみた。


「早くから準備していたが、なかなか想定通りにはいかなかった」。3月上旬、小樽市の50代の主婦は、札幌の専門学校に通った子ども2人の卒業式を終え、肩の荷が下り、ほっとした表情を見せた。長女が4年制、長男が2年制に通って同時に卒業し、春から親元を離れ、ともに就職する。

夫が4年前に公務員をリタイアしたのと進学時期が重なり、退職金を2人の学費に充て、ほぼ使い果たした。「無事に社会人になり安心したが、老後資金は心もとない」と本音を漏らす。当初は大学進学や奨学金の活用を思い描いて育ててきたが、受験直前の急な進路変更など、親の目算通りにはいかなかった。

習い事や英語教室などにお金をかけてきた方だという。子どもが小さいころから自分たち親の病気など万が一の事態には生命保険や積立預金で対処するようにし、有利子貸与の奨学金や教育ローンに頼らなかった。「子どもの将来にも迷惑をかけたくないし、良かったと思っている」と振り返る。子どもたちが資格を取って就職できたため、学費や想定外の出費が多かったことも前向きにとらえている。「子どもたちには、少しずつでも返してもらいますよ」と表情を緩めた。

固定費見直し 貯蓄こつこつ

「奨学金を借りるのは子どもの将来に負担をかけるととらえ、教育資金準備の相談にいらっしゃる保護者が増えている」。札幌で子育て世代など女性対象のマネーセミナーを約10年開いてきたファイナンシャルプランナーの小玉千恵子さん(46)は、最近の傾向を語る。奨学金の返還が滞るケースが報道されるようになり、親たちは将来の教育資金の見通しに不安を感じているという。

「子どもが小さいうちに早い段階から少しずつ準備していくことが大事」と小玉さん。セミナーでは、家計を住居費や通信費などの固定費から見直すアイデアや、投資初心者でも着手しやすい少額・長期投資の制度を貯蓄や学資保険と並行して活用する「こつこつ型」の事例を紹介している。

小玉千恵子さん

小玉千恵子さん

小玉さんによると、まずは高校進学や大学進学の志望先を決める時期までにいくら用意しておきたいか、具体的な目標額を設定すると計算しやすい。「こつこつ型」で備え、それでも不足が心配になったら奨学金や教育ローンを検討するという二段構えを勧める。

家庭ごとに収入が違えば、価値観やお金の使い方も異なる。小玉さんは「他人と比較しても意味がなく、自分の家はどうなりそうかを予測して無理のない計画を立ててほしい」と語る。

軌道修正 柔軟に

教育資金の準備は、子どもが小さいうちから必要だ。しかし、子どもの誕生時に思い描いた青写真は、親の転職、離婚、死別といった家庭の状況や、子どもの進路先などで変わる。第一生命経済研究所の副主任エコノミスト、星野卓也さん(30)が、国の調査結果をもとに家計支出に占める教育関係費の割合を試算してくれた=表=。「時々の支出を見直したり、貯蓄に回したりして軌道修正する参考にしてほしい」と話す。

子どもの成長につれ、教育関係費は増す。ただ、星野さんは「各家庭で教育にかけられる枠には限度がある。必ずしも、2人なら一人っ子と比べて2倍、3人なら3倍となるわけではなく、各家庭のやりくり次第であることが数字に表れている。子育て負担を前向きにとらえるきっかけにしてほしい」と語る。

児童手当や高校の就学支援金制度、今後始まる大学など高等教育の無償化など、子育ての負担軽減につながる制度も多い。所得制限など対象や条件の見極めも必要で、星野さんは「子育ての先輩や、同世代の親などと積極的に情報交換をして、『もらいそびれた』ということがないように」と注意を促す。

文部科学省の2016年度学習費調査では、1人の子どもが幼稚園から高校卒業までを全て公立に通った場合、学校や塾などに支払う学習費の総額は540万円、全て私立なら1770万円になる。これに大学4年間の学費、そのほかの食費や衣料費などといった幅広い養育費を含めると、総額では大きな負担となる。

取材・文/大野日出明(北海道新聞記者)

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