• 2019/11/07

    夫が家事「分かるけど…」 「すべき」8割が自覚 妻「教えるの面倒」

     夫婦で家事に向き合い、円滑に分担を進めるための方策について、アンガーマネジメントコンサルタントの岡本真なみさん(札幌)と、「男性学」を主に研究する大正大(東京)の田中俊之准教授に聞きました。

    励みになるような言葉を アンガーマネジメントコンサルタント・岡本真なみさん

    おかもと・まなみ 北大経済学部卒。全国の企業や病院で接遇研修や顧客満足度調査を実施し、アンガーマネジメントを伝えている。共著に「医療&介護 職場のルールBOOK」(医学通信社)がある。

     
     女性には「分担させ上手」になってほしいと思います。夫のように身近な存在は「相手を変えられる」「言わなくても、伝わる」と考えやすく、怒りの感情を持ちやすい相手です。でも実際は、夫婦の価値観は一緒ではありません。

     食器洗いを例に、妻は「洗ったお皿は、洗いカゴに立てて並べるべきだ」と考える一方、夫は無頓着で、重ねて置いているとしましょう。妻から見ると「なぜ重ねるの?」と怒りたくなるでしょうが、怒っても夫は変わりません。「お皿は立てて置くと水切りが良いので、立てて並べて」と理由を添えて説明すると、説得力が加わり、夫も納得して行動を変えやすくなります。

     また、同じ家事を長く担当すると「こうするべきだ」という意識が知らず知らずのうちに強まります。怒りの感情は「べき」が裏切られた時に起きやすく、「ちゃんとやってよ!」「違うでしょ」と怒りたくなりますが、それは職場ならパワハラに当たる可能性があります。少し面倒ですが、新入社員に接するような気持ちで家事のやり方を伝え、「ありがとう」「助かる」など励みになるような言葉を時に伝えていくと、夫も家事へのモチベーションが上がります。

     怒りの感情は、疲れている時や、「つらい」「寂しい」などネガティブな感情がたまっている時にわきやすいものでもあります。自分自身の気分転換も、大切にして下さい。男性の側は家事を「手伝ってあげる」ではなく、主体的に「シェアする(分担する)」という気持ちを持つことが大切。男性は家事の中で、比較的難易度の低いものを担当しているのが現状です。その点も自覚しておくと、妻と良好なコミュニケーションを取りやすくなると思います。

    コミュニケーションしっかり 大正大学・田中俊之准教授

    たなか・としゆき 1975年、東京都生まれ。内閣府男女共同参画推進連携会議の有識者議員などを務める。「男子が10代のうちに考えておきたいこと」(岩波ジュニア新書)など著書多数。

     
     男性側に「家事を担う必要がある」という意識はあるのに行動が伴わない背景には、教育面と家庭面での理由があると思います。今の40代以上の男性は、中高生時代に学校で家庭科を学びませんでした。家庭では専業主婦の母親が家事を担い、男の子は手伝いをあまり求められません。無意識のうちに「家事は自分の役割ではない」と認識し、家事が行動として身に付いて来なかったことが背景にあります。

     男女の賃金格差も、家事分担に影響を与えています。フルタイムで働く女性でも、賃金水準は男性の7割程度にとどまっています。夫の育休や時短勤務を検討する時に「夫の給料を減らしてまで、夫に家事や育児を担わせようとは思わない」という女性もいるでしょう。男女の賃金格差は解消されなければなりませんが、今の現状を踏まえて、夫の労働時間と給料をどの程度まで減らし、どの程度家事を担わせるのが良いのか、夫婦で価値観を共有する必要があります。

     日本社会では「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担の意識が強く、男性は「定年まで40年間、働き続けるのが当たり前」という見えないプレッシャーにさらされてきました。これは精神的に相当な負担で、家事や地域活動など、仕事以外のことは考えないようにしないと難しいことだったかもしれません。

     私は男性が、男性自身のためにも、家事・育児をもっと担うべきだと思います。家庭や地域での役割を果たしてこそ、定年後も居場所があるし、人生の可能性が広がります。妻は夫のワークライフバランスを大切にし、夫は家事から逃げない。そうした前提で、夫婦でしっかり話し合うと良いと思います。

    <編集後記>

     お掃除ロボットなど便利な家電を使って家事を減らすようにしていますが、省力化にもやっぱり限界があります。疲れた体で家事をしている時に、夫が新聞を読んでいると「私はこんなに忙しいのに、なぜ余裕があるの?」とモヤモヤすることも。

     岡本真なみさんは「自分自身も気分転換を」「新入社員に教えるように家事のやり方を伝え、時には励みになる言葉を伝えて」と言います。夫婦のワークライフバランスを大切にしつつ、夫や子どもにもさらに家事を担ってもらえるよう工夫していきたいと思います。


     北海道新聞くらし報道部は、札幌市の「家事シェアのすすめ」を参考に、家事分担のチェックリストの例を作成しました。こちらを活用して夫婦の現状を把握し、話し合いのきっかけにしてはどうでしょうか。