• 離乳食の常識見直そう 母親の4人に3人が悩み 科学的根拠踏まえ柔軟に

    「作るのが大変」「子どもが食べてくれない」。母親の4人に3人が、離乳食に何かしらの悩みを抱えている。母親の負担が大きい一方で、日本の子どもは離乳食から十分なカロリーや栄養をとれていないとの調査結果もある。離乳食の“常識”には科学的な根拠に基づかないものが少なくないとの指摘があり、専門家は「細かな決まりごとにとらわれ過ぎず、柔軟に考えて十分な栄養をとらせてほしい」と助言している。

    エネルギー・栄養価低い「10倍がゆ」

    北広島市に住む看護師、加藤芽久美さん(33)は、次女(8カ月)がおかゆをあまり食べないため、6カ月健診の際に栄養士に相談した。返ってきた答えは「おなかが空いていないからでしょう。食事前に4時間、母乳をやめてみて」。母乳は欲しがるたびに頻繁に与えており「4時間空けるなんて無理」と途方にくれた。

    母乳育児を相談していた助産師に「おかゆを嫌がるようなら、パンはどう?」「おなかが空きすぎていると食べないこともある。離乳食の前に少し授乳するのもOK」と聞いた。次女は今、パンやゆで野菜、小魚など好みのものを食べている。おかゆにこだわらず、母乳を止めなくてもいいと知り「離乳食がとても楽になった。(次女が)よく食べるので楽しい」と言う。

    厚生労働省の乳幼児栄養調査(2015年)=グラフ=では、離乳食について「作るのが負担、大変」「食べる量が少ない」など何らかの悩みを持つ人が74.1%に上った。

    世界保健機関(WHO)の補完食(離乳食)指針の翻訳に携わった小児科医で緑の森こどもクリニック(愛知県岡崎市)の瀬尾智子院長は、母親が悩む背景には「現状の栄養指導が厳しく、枝葉にとらわれ過ぎていることがある」とみる。

    その一つが、米を10倍の水で炊く「10倍がゆ」。離乳食を紹介する本では、最初は10倍がゆを「1日1回」「1さじから」始めるよう勧める。しかし、WHOの指針では、薄すぎるおかゆはエネルギーや栄養価が低く、「1日5回与えても子どもの栄養必要量を満たせない」として、推奨されていない。

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    生後6~8カ月の子どもは、離乳食で1日約130キロカロリーを補う必要があるが、10倍がゆは100グラム食べたとしても、わずか36キロカロリーしか補えない。瀬尾院長は「最初から5倍がゆでいい。1日1回である必要もありません」といい、「赤ちゃんにも個性があるので、少しずつしか食べない子なら、1日3回でも良いでしょう。大切なのは必要な栄養をとること」と力を込める。

    瀬尾院長の元には、他にも「おかゆを食べないので、その先のステップに進めない」「フードプロセッサーが壊れたので、本に載っている『なめらかな』食材を用意できなくなった」などの悩みが寄せられる。「昔はフードプロセッサーはなかったし、海外では米がゆではなくイモやバナナを主食とする国もある。もっと柔軟に考えて」と助言する。

    失われる鉄分、早めに肉でも「補完」

    一方、離乳食では鉄分をしっかりととることも大切だ。赤ちゃんが持って生まれる「貯蔵鉄」は生後6カ月頃に底を突くため、離乳食で適切に補わないと貧血になるリスクがある。日本ではタンパク源として白身魚や豆腐などを推奨し、鉄分を豊富に含む赤身の肉や魚は少し遅らせるよう指導されるのが一般的だが、WHOの指針では生後6カ月から食べさせるよう勧めている。

    東京北医療センター(東京)小児科の奥起久子医師は、乳児の成長曲線についてWHOと日本の調査を比較し、日本は生後6カ月までの発達状況は世界的にみて遜色ないものの、6カ月~1歳6カ月の間は成長スピードが鈍る―という研究結果を示した。

    原因としては、日本の離乳食の栄養価の低さに加え、離乳食開始後は「授乳回数を減らすべきだ」との考え方が根強くあることなどが考えられると指摘する。奥医師は「離乳食の目的は、母乳(ミルク)で不足する栄養を補うこと。その意味では、授乳をやめるという意味合いにもとれる『離乳食』ではなく、『補完食』の呼び方を広げるべきでしょう」と提案している。

    取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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