復職に生きる育児経験 急な発熱への対応力/子どもと長く向き合う忍耐力…

外で仕事をして社会とかかわり、収入を得たい―。結婚・出産後も「仕事をしたい」と考える女性は増加傾向にあります。しかし育児に追われる毎日を過ごすうち、「職場へ戻っても、ちゃんと働けるのだろうか」と不安を感じる女性も少なくありません。そんな女性たちに専門家は「時間管理やコミュニケーションなど子育てを通じて磨かれる“仕事力”もある」とエールを送ります。

専門家「まず外に踏み出して」

札幌市内のコールセンターで働く樋口祐美子さん(37)は結婚後、勤めていた会社を退職。長男(1)の出産を経て、今年初めに今の会社に入りました。

再び働き始めて「以前よりも自分自身の考え方が柔軟になった」と感じました。クレームの電話を受ける時も「相手が怒っていても、落ち着いて受け止められるようになった。子どもの『イヤイヤ』に比べれば、相手の怒っている理由が分かるぶん、対応しやすい」と言います。

樋口さんが勤務するディノス・セシールコミュニケーションズ札幌総務課の小山内由紀さんは「子育て中の女性はどっしりと構えてトラブルにも強く、時間を効率的に使うという印象」と話します。

育児中の女性のキャリアカウンセリングなどを行う「ウィズ ア スマイル」(札幌)の本村規子代表は「子育て中の女性自身が『私にはブランクがある』と考え、復職するにはハードルが高いと感じるケースが多いですが、実際は違います」と力を込めます。

例えば、育児と家事の両立。子どもの世話をしつつ、料理や掃除などの家事をこなす経験は、効率的に仕事を進める力や時間管理力を高めます。思うように気持ちを言葉にできない子どもと長く向き合い続ける努力も、忍耐力やコミュニケーション力の向上につながるといいます=表=。

子育て中の社員は一般に、子どもの急な発熱で仕事を抜けたり、残業ができないなど働き方に制約がありますが「それを補うくらいに能力が高く、テキパキと仕事をこなすという評価を企業側から聞きます」と本村さん。人によっては子育てにより、相手の目線に立って分かりやすく教える力が伸びて「若手の育成がうまいと言われる人もいる」といいます。

子育てしながら就職先を探す女性を対象とする「マザーズハローワーク札幌」の井上百子・上席職業指導官も、育児経験のある女性について企業から「限られた時間や予算で効率よく仕事を進める」「よく気が付く」などの評価を聞くと話します。井上さんは「家事と育児の両立や、日頃の家計のやりくりが生かされているのでしょう」とみます。

求職中の女性の中には、パソコン操作を忘れるなど「子育て中、何もして来なかった」と不安を漏らす人も多いといいますが、「本人が気づいていないだけで、育児や何らかの地域活動を通じて社会に役立つ力を身に付けていることは多い。まずは1歩、外に踏み出してみて」と促しています。(酒谷信子)

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