• 2018/10/13

    <くまとやまねこ> 幼なじみがくれた光 前へ進もう


    「絵本はママを育ててくれる」#7
    札幌で朗読活動を行う谷岡碧さんが、在京テレビ局記者を辞めて移住したタイでの子育てと、日々を支えた絵本についてつづります。


     ピアノ演奏と絵本の読み聞かせをするユニット「enets」(エネッツ)を結成したのは昨年のこと。これまで14回、札幌市内でコンサートを開きました。

     タイのNGOを辞めて帰郷し、育児に専念していた私を「何かやろうよ」と誘ってくれたのは、幼なじみで長くヨーロッパで活躍したピアニストの石黒由佳さんです。

     当時の楽しみは息子へ絵本を読むこと。「朗読と音楽を合わせてみようか」と、彼女の自宅で挑戦すると、ピアノの響きで言葉や絵が輝き出し、自分の進むべき方向にも光が届いたようでした。

    (札幌市内の「カフェ ブルー」で=2018年7月、谷岡碧さん提供)


     「くまとやまねこ」は、バイオリンが登場する絵本を探していて出会いました。石黒さんが市内のバイオリニストと共演し、私もゲストとして朗読したのです。

     親友を亡くし、失意に沈むくま。そこへ現れた旅の途中のやまねこは、悲しみを忘れさせようとはしませんでした。バイオリンを奏でて楽しい思い出をよみがえらせ、背中をそっと押したのです。

     「人の心を揺さぶる伝え手になりたい」という私の夢は、報道やNGOの現場では途切れましたが、今は別の舞台があります。チャンスをくれた石黒さんは、私にとってのやまねこなのかもしれません。

    今回登場した絵本


    「くまとやまねこ」
    (文・湯本香樹実、絵・酒井駒子 河出書房新社)

    ある朝、親友のことりが死んでしまう。くまの悲しみは、全編モノクロの絵に込められています。陽の光が差し込むようにほんの少し色が入るのは、やまねこの演奏のあと。再生の喜びは、大人の胸を熱くします。

    (2018年10月13日付 北海道新聞「週刊じぶん」掲載)

     PROFILE

    谷岡 碧(たにおか・みどり)
    2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。33歳。

    enets公式サイト