• 2018/07/14

    <だめよ、デイビッド!> ほんとは叱りたくない 日本暮らしに戸惑う息子


    「絵本はママを育ててくれる」#5
    札幌で朗読活動を行う谷岡碧さんが、在京テレビ局記者を辞めて移住したタイでの子育てと、日々を支えた絵本についてつづります。


     息子が3歳になったころ、生活の拠点をタイのチェンマイから札幌へ移しました。同時に急増したのが、私の発する「だめよ!!」です。

     例えばこんなふう。

     大好きな泥遊びの後、タイでは服の上から水を浴びて終わりだったのに、日本に来たとたん「そのまま家に入っちゃだめ!」。家の中も庭も裸足(はだし)で走り回っていたのが、今は「靴はちゃんとはいて! 脱いだらそろえなさい!」

     必死にしかる私への戸惑いや反発が限界に達したのか、その日の息子は朝からご機嫌斜め。騒ぐわ、汚すわ、言うことは聞かないわで、こちらも「だめ」のオンパレード。息子の混乱も分かるだけに、心底疲れ果てました。

     こんな時は「だめよ、デイビッド!」に助けてもらおう。裸で外へ出て行っちゃう、フライパンをお玉でたたきまくる、おもちゃは散らかしっぱなし。実に楽しそうな表情を見ているうち、スーッと肩の力が抜けていきます。

     「デイビッドとあなたは一緒だね。だめだめ言っちゃうお母さんもおんなじ」と笑ったら、息子の心もほぐれていくのが分かりました。最後は「大好きよ」と息子を抱きしめさせてくれたこの絵本、仲直りの特効薬です。

    今回登場した絵本


    「だめよ、デイビッド!」
    (デイビッド・シャノン作、小川仁央訳 評論社)

    裏表紙いっぱいに「No」の文字、扉には仁王立ちのママを描いた親目線の作品。育児のプレッシャーに悩む私たちも、実は“ダメ出し”される立場。無条件に「Yes!」を伝えてくれる子どもへのいとおしさが湧いてきます。

    (2018年7月14日付 北海道新聞「週刊じぶん」掲載)

     PROFILE

    谷岡 碧(たにおか・みどり)
    2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。33歳。

    enets公式サイト