• 2018/03/10

    <おつきさま こんばんは> 満月が応援 タイで始まった孤軍奮闘育児


    「絵本はママを育ててくれる」#1
    札幌で朗読活動を行う谷岡碧さんが、在京テレビ局記者を辞めて移住したタイでの子育てと、日々を支えた絵本についてつづります。


     28歳まで、テレビ局の報道記者でした。激務ですが、やりがいも大きく、毎日夢中でした。

     身体の不調が続いたのは2012年夏。1カ月の入院で回復しましたが、08年に結婚した映像ディレクターの夫(40)の慢性疾患も同時期に分かりました。悩んだ末に退社し、夫婦ともども、病とつき合いながら暮らせる場所を求めてタイのチェンマイへ移住。14年には長男遼(はる)を出産しました。

     待っていたのは、ド田舎での孤軍奮闘育児でした。4月の気温は40度。砂利道でベビーカーは役立たず。散歩に出れば牛とすれ違い、近所で飼われていた豚を見に行くのが日課。子育て支援センターも公園もなく、ママ友もいません。

     唯一の楽しみは、寝る前に絵本を読んであげること。息子の体温を感じながら言葉を伝える時間は、私の心も温めてくれました。「おつきさま こんばんは」もその時読んだ1冊です。

     息子が実物を“発見”したのは生後9カ月。真っ暗な空に浮かぶ満月に驚く息子を抱きながら、私も初めて本当の月を見たような気がしました。故郷からも仕事からも遠く離れて生きる私へ、誰かがくれたごほうびのような美しさでした。

    今回登場した絵本


    「おつきさま こんばんは」
    (林明子・作 福音館書店)

    2匹の猫が見上げる夜空には、輝くお月さま。雲に隠され泣きそうになったり、またにっこりしたり。何度も読むうち、0歳だった息子も泣き顔や笑顔を見せるようになりました。表情や感情を豊かにする本とも言われます。

    (2018年3月10日付 北海道新聞「週刊じぶん」掲載コラム)

     PROFILE

    谷岡 碧(たにおか・みどり)
    2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。33歳。

    enets公式サイト