哲学?妄想?発想力? ヨシタケシンスケさんが独自の視点で描く“発想絵本”レビュー(前編)

2013年に『りんごかもしれない』で絵本作家デビューをして以来、独自の視点とクスっと笑えるユーモアたっぷりの作品が人気となり、「MOE絵本屋さん大賞」や「けんぶち絵本の里大賞」をはじめ、数多くの賞を受賞している大人気絵本作家・ヨシタケシンスケさん。その作品は、子どもだけでなく、大人の心もつかんで離しません。

そんなヨシタケさんの代表作である“考えること”を果てしなく突き詰めた「発想えほん」シリーズから、1個のりんごをモチーフにどんどん妄想が膨らんでいく『りんごかもしれない』と、自分の分身のロボットをつくるために自己分析を深めていく『ぼくのニセモノをつくるには』の2冊を、編集部スタッフがレビューします。

妄想が詰まったユーモア溢れる絵本
『りんごかもしれない』

『りんごかもしれない』は、ヨシタケさんのデビュー作。テーブルの上のリンゴを題材に、“身近な食べ物がもし本当は違うものだったら?”という視点で、深くて面白い考察が続いていきます。

ある日、男の子が学校から帰ってくると、テーブルの上にリンゴが置いてありました。そのリンゴを見て、男の子は小さな疑問を抱きます。

「……でも……もしかしたら これは りんごじゃないのかもしれない」

そこから、「〇〇かもしれない」というフレーズだけで男の子の想像(妄想)が展開。赤い魚が丸まっているのかもしれない、何かの卵かもしれない…と妄想は途切れることを知りません。

りんごには、きょうだいがいるのかもしれない

以前、4歳になりたての甥に読み聞かせたときのこと。男の子の妄想に興味津々で、ページをめくるたび…いや、イラストを指差すたびに、「なんで? ねぇ、どうして? 次は?」の連続でした。特に気に入っていたのが、「りんごには、きょうだいがいるのかもしれない。」の部分。らんご、るんご、れんご、ろんご(!?)といった名前と形の面白さも相まって、大盛り上がり!

リンゴひとつで、ここまで話が広がるとは、ただただ驚くばかりでした。常識も予想も覆していく発想の数々に、「どうして私は今まで、リンゴがリンゴであることを疑ったことがなかったのだろう」と考えてしまったほど。

果たして本当にリンゴなのか、いろいろ悩み考えた男の子の妄想の行き着く先がまた面白くて…。

見えないものを想像することの楽しさや、物事の多面性に気づかせてくれる一冊です。大人も楽しめるので、ぜひお子さんと一緒に頭をほぐしながら色々な発想(妄想?)を楽しんでみてください。

りんごかもしれない

りんごかもしれない
著 者:ヨシタケシンスケ
発行所:ブロンズ新社
定 価:1,540円
対象年齢:4歳から

テーブルの上にりんごがおいてあった。……でも、……もしかしたら、これはりんごじゃないかもしれない。もしかしたら、大きなサクランボのいちぶかもしれないし、心があるのかもしれない。実は、宇宙から落ちてきた小さな星なのかもしれない……「かんがえる」ことを果てしなく楽しめる、発想絵本。

自分の個性と向き合う哲学絵本
『ぼくのニセモノをつくるには』

『ぼくのニセモノをつくるには』は、「じぶんについて考えてみよう!」がテーマ。宿題や家の手伝いを自分の代わりにやってもらう「おてつだいロボ」を買うところから始まります。

ニセモノだとバレないように、「あなたのことを教えて欲しい」というロボットに、「ぼくは〇〇」と示しながら、自分の家族、好きなモノ、苦手なことなど自分自身について一生懸命考えます。

4歳の息子に読み聞かせすると、「ぼくはすきなものときらいなものがある」の中で、好きなものに“あじつきのり”と書かれているのを見つけ、「ぼくとおなじ!」と嬉しそう。

自分から見た『自分』、他人から見た『自分』、2つの視点から「自分とは何か?」と考えていくところに、ヨシタケさんらしさを感じました。

4歳の息子に読み聞かせ

物語は、主人公が「ぼくはひとりしかいない」ということに気づくところで終わります。

おばあちゃんに聞いた話として、「人間は一人一人形の違う木のようなもの。木の“種類”は生まれつきだから選べないけれど、それをどうやって育てて、飾り付けするかは自分で決められる」と説明し、最後にこう続けます。

「木の おおきさとかは どうでもよくて じぶんの木を 気にいってるかどうかが いちばん だいじらしい。」

思わずハッとさせられたという大人も多いのではないでしょうか。

「自分とは何か?」という難しいテーマを、わかりやすい言葉とユーモアのあるイラストでやさしく考えさせてくれるので、自分を知ることの楽しさを感じるきっかけになる一冊。

息子には、まだ少し難しいようでしたが、成長に合わせて長く読み続けていきたいと思わせてくれた作品です。

ぼくのニセモノをつくるには

ぼくのニセモノをつくるには
著 者:ヨシタケシンスケ
発行所:ブロンズ新社
定 価:1,540円
対象年齢:4歳から

けんたくんは、やりたくないことをやらせるために、おてつだいロボを買いました。ロボは完璧なニセモノになるために、けんたくんのことをあれこれ知りたがります。「自分らしさって?」、「人からどう思われてる?」考えれば考えるほど、複雑でややこしい。だけど、なんだかちょっとたのしくなってきて…

プレゼントにおすすめ! 「発想えほん」シリーズのギフトボックス

今回紹介した『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』をセットにしたギフトボックス「かもしれないボックス」が販売されていることをご存じですか?

クリアファイルはA5サイズで、マスク入れにもピッタリ!

クリアファイルはA5サイズで、マスク入れにもピッタリ!

「かもしれないボックス」は、特製クリアファイル付きで、ボックス本体は四つ折りの封筒のような形状。展開すると、ヨシタケシンスケさん描きおろしのイラストとメッセージが描かれており、開ける楽しさも♪

それでいて価格は『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』2冊分と変わらないというから驚きです! お得で特別感のあるセットなので、プレゼントや、夏休みの読書感想文の候補にいかがでしょうか。

『ヨシタケシンスケ発想えほん かもしれないボックス』

『ヨシタケシンスケ発想えほん かもしれないボックス』
作  :ヨシタケシンスケ
発売日:2021年10月28日(木)
定 価:3,080円
販 売:全国の書店などで販売
サイズ:270mm×220mm×24mm
対象年齢:4歳から
セット内容:『りんごかもしれない』1冊、『ぼくのニセモノをつくるには』1冊、特製クリアファイル(A5サイズ)1枚
発 行:ブロンズ新社
http://www.bronze.co.jp/

文/mamatalk編集部

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