連載コラム「あそぶ→そだつ」第2回

【あそぶ→そだつ】声や動作で対話を学ぶ

きれいな色の木の玉がカラカラと音を立てて落ちていく「ドラム玉落とし」という筒型のおもちゃと、生後6カ月の赤ちゃんについて、4年前に札幌市内の認定こども園で見た光景を紹介します。

赤ちゃんは音が鳴ると、そちらに目をやり、落ちていく玉の行方をじっと目で追います。玉の動きが止まると両方の手足をバタバタさせ、まるで「楽しい! もう1回見せて!」と話しているようでした。

保育者はそれに応え、筒を逆さまにしました。玉が止まっては手足を動かし、また保育者に返してもらう。これは赤ちゃんだけではなく、保育者と一緒に楽しむ“協働”の遊びですね。

この遊びの中で赤ちゃんは聞く力と見る力を育てています。さらに、この遊びには「他者との対話」という大切な意味があります。

思うように身体を動かせない赤ちゃんにとって、そばにいる大人は必要な存在ですが、まだ言葉を話せません。だから大人は赤ちゃんの発声や泣き声、表情や動作から、何を伝えようとしているのかを考えますし、赤ちゃんも伝えるのに一生懸命です。自分の声や動作に大人が応え、してほしいことをしてくれると、伝わる喜びを得られるでしょう。

冒頭の赤ちゃんは、自分の声や動作で「もう1回!」が伝わると知っていました。保育者とのやりとりで、それが分かったのです。遊びの中で人との対話の仕方を学んだのですね。

赤ちゃんは徐々に、このおもちゃを触ったり、転がしたり、ひっくり返したりできるようになります。今まで大人にしてもらったことが自分でできるようになるのは、大きな喜びであり自立の一歩です。いつどんなことができるようになるのか、大人は楽しみにその時を待ちましょう。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

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