• 2020/06/15

    わが子はどの道に…教育相談、学校見学 コロナで休止 障害児の就学先 悩む親たち

     障害児や支援を必要とする子どもの就学先選びは例年、入学前年の4月ごろから始まります。ところが、来年4月に小学校入学を控えた子どもの場合、新型コロナウイルス感染拡大の影響で教育相談や学校見学がストップし、保護者は不安を抱えています。こうした子どもたちの支援事業を手がける民間企業が、オンラインで保護者をサポートする動きも出てきました。(鹿内朗代)

    オンライン活用し支援も

     「いくつか小学校を見に行って選択肢を絞りたいのですが、時間だけが過ぎていく。不安です」。長男(5)が来年新1年生になる札幌市中央区の女性(37)は、こう話します。

     長男は発達障害の診断はついていないものの、その傾向を持つ「グレーゾーン」。例えば、「はさみとのりを箱から出して」という指示を聞くだけで理解することは苦手ですが、「はさみ」と「のり」を実際に見せながら説明すると理解できます。公園の遊具でうまく遊ぶことができないなど、身体的にも多少の困難があります。

     女性は長男を地域の学校の通常学級に通わせたいと考えていますが、何事もそつなくこなす周りの子を見て劣等感を抱かないか心配です。「長男の特徴を理解し、支援してくれる態勢が通常学級にあるのか。ほかの就学先の方がいいのか。知りたいことはたくさんあるが、相談場所が少ない」

     2007年4月の学校教育法改正で、障害児や支援を必要とする子どもたちの自立などを支える「特別支援教育」が始まり、こうした子どもたちが在籍する全ての学校で行われることになりました。就学先の選択肢は、地域の小学校の「通常学級」、「通級指導」、「特別支援学級」に加え、障害の程度が比較的重い子どもが対象の「特別支援学校」の四つがあります=図参照=。

     望ましい教育環境は子どもの性格などによっても違うため、各教育委員会は保護者や本人の意向を可能な限り尊重して就学先を決めます。道教委によると、19年度に道内で義務教育を受ける児童生徒のうち、特別支援学校の在籍者が2151人、特別支援学級の在籍者が1万4907人。通級指導を受ける児童生徒は6003人でした。通常学級に通う障害がある児童生徒の数は把握していないといいます。

     就学先選びにあたり、東京都などでは全体の流れや、各自治体の就学支援相談の申込期限を伝える説明会が開かれますが、道内ではほとんどありません。保護者はこれらを自分で調べ、各自治体の相談所での面談や学校の見学申し込みも行います。

     道内では例年、夏ごろの学校見学を想定し、3~5月に相談所での面談などが増え始めますが、今年はこの時期に新型コロナウイルスの感染が拡大し、相談業務を担う札幌市幼児教育センターや道立特別支援教育センターが来所による面談を休止。子育てサロンや幼稚園も休みとなったため、保護者同士が情報交換できる機会も少なかったのです。

     保護者の不安に寄り添うため、児童の発達支援事業を行う「たすく」(神奈川県鎌倉市)は4月から、札幌教室(札幌市中央区)など全国の教室でオンラインによる無料相談会や保護者同士の交流会を開催。この中で特別支援教育の仕組みや、それぞれの就学先の特徴、学校見学の必要性などを伝えています。

     5月に行われたオンラインでの交流会には、札幌や鹿児島など全国から母親約10人が参加し、それぞれの子どもについて「幼稚園と家では全く様子が違う」「大人とは対話できるが、子ども同士の関わりが苦手」などと話し合った。これに対し、作業療法士の職員が「どんな場面で、特徴的な行動が出るのか。環境による変化に注目することで、その子に合う教育の方向性も見えてくる」と助言しました。

     一方、札幌市幼児教育センターは6月から通常の来所相談を再開し、道立特別支援教育センターも7月から道内各地で開く巡回教育相談を始める予定です。ただ、再流行すれば学校見学などが制限される可能性もあり、市幼児教育センターは「気になることがある人は、早めに連絡してほしい」と呼びかけます。

    「たすく札幌教室」渡辺倫代表に聞く
    子の特徴整理し、情報集めて

     支援が必要な児童の療育や就学支援事業を行う「たすく札幌教室」代表の渡辺倫さん(45)に、就学先選びの方法や注意点を聞きました。

    たすく札幌教室の渡辺倫代表

     ――まず、保護者は何をすべきですか。

     「公的なサポートがもっと必要だと思いますが、現状では、子どもの望ましい就学先は保護者が努力して探さなくてはなりません。まずはお子さんにどのような発達の特徴があるのかを把握しましょう。子どもは集団生活の中では頑張るので、幼稚園や保育園では、家庭とは違う様子を見せます。園の先生にも話を聞き、特徴を整理しましょう。どういう学校生活を送ってほしいか、本人はどうしたいかという点を整理し、両親で情報や思いを共有することが大切です」

     ――就学先選びの具体的な進め方は。

     「就学先が決まるまでのスケジュールや、特別支援教育についての情報を得てほしいです。各自治体のホームページを見て、相談先に問い合わせてみましょう。新型コロナウイルスの感染状況にもよりますが、その後、面談の予約を入れたり、学校見学の予約を入れたりすることになります」

     ――学校見学では何を尋ねれば良いですか。

     「その学校で子どもに合った環境や支援が得られるか、得られないか、どのような教育活動ならできるか、具体的に質問して疑問を解決できるといいですね。見学の際はお母さんだけでなく、ぜひお父さんも一緒に行ってください」

     ――子どもにストレスがない、ただただ自由な環境を望んでしまいそうです。

     「社会性を身につけるためにも、多少ルールがある場面に身を置き、自制することを学んでゆくことも大切です。療育的な視点を持って、就学先を選んでほしい。自治体の相談先や幼稚園、民間の支援機関などをうまく活用してもらいたいと思います」

    (2020年6月8日付 北海道新聞朝刊掲載記事)

    北海道新聞朝刊 教育面で毎週月曜日に掲載
    2020年度に大きく変わる大学入試制度や、新学習指導要領など教育の今について、その背景や影響を深く掘り下げ、子どもや保護者が知りたい情報を、分かりやすくお伝えしています。また、未来を生きる子どもの「生きる力」となる学びや学校生活について、子どもの視点で一緒に考えます。

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