連載コラム「あそぶ→そだつ」第14回

【あそぶ→そだつ】ものを代用「見立て遊び」

1年ほど前に札幌市内の認定こども園を訪れると、1歳3カ月の男の子が積み木を耳に当て、うなずきながら「うんうん」と何か話していました。積み木を電話に見立てているのです。このような「見立て遊び」は、1歳ごろから見られる遊びで、飲むことや食べることなど生活行為を再現することから始まります。

この男の子のように、目の前に実物の電話はないけれど、別のものを代用して見立てる行為は、その物が持つ意味や用途を理解していること、実際に使っている場面をイメージすることが必要です。こうした遊びを重ねるごとに遊びはより豊かなものになり、自分自身の行為だけでなく、次第に親など周囲の人の姿を見て、料理のまねをしたり、人形にご飯を食べさせたり、買い物ごっこをしたりするなど、大人のまねをして遊ぶようになります。子どもは大人のしていることをとてもよく見ています。自分もやってみたいという憧れのようなものを抱いているようです。

子どものままごと遊びを見ると、家庭や社会の様子が見えると感じることがあります。ある子はフライパンを巧みに振り、ある子は電子レンジを何度も使うなど、家庭の台所事情が見えます。

またこの数年で、電話を扱う子どもの姿は少しずつ変化しています。固定電話を持たず、携帯電話だけですませる家庭が増えているため、遊びの中でも歩きながら電話をする子どもが見られるようになりました。また、スマートフォンに見立てた積み木に人さし指を当てスライドさせるなど、話をするだけではなく、ほかにもできることがあるという理解が進んでいます。

子どもたちの観察力や模倣の力には驚かされます。道具や行動、社会の変化は、子どもの遊びの変化につながります。子どものままごと遊びは、その時代の鏡のようですね。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

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