連載コラム「あそぶ→そだつ」第12回

【あそぶ→そだつ】励まされ、挑戦心育つ

数年前に訪れた札幌市内の認定こども園で、1歳半くらいの男の子が積み木で遊んでいました。目線の高さまで積むと、視覚だけでなく手や指の感覚を頼りにバランスをとりながら慎重に積んでいきます。積み木の上の面が見えず、積みにくそうです。

試行錯誤しながら手指を動かすものの、9個目を積んでいる時、積み木が倒れてしまいました。すると男の子は人さし指で「1」を示し、そばにいる保育者の顔を見て「もう1回したい」と気持ちを伝えます。

保育者は「もう1回?」と人さし指を出しながら、積み木を拾って、別の積み木の上に一つ乗せました。その後は男の子が自分で積んでいきます。保育者が乗せた一つの積み木が、男の子の挑戦を後押ししたのだと感じました。

近くで自分を見ている人がいること、また気持ちを理解し、手を貸してくれたり励ましたりしてくれる人がいること。このような安心に支えられ、男の子は自分で、その場にあった10個の積み木をすべて積み上げました。その時の、ばんざいをして保育者を見る誇らしげな笑顔は、今でも忘れられません。

男の子は自分で積んだ積み木をうれしそうな表情で見つめ、指でそっと触りました。すると、また崩れてしまいました。しかし、今度は保育者に手伝いを求めず、最初から最後まで自分で積んだのです。自分で積めたという達成感や満足感が、「次は自分でできる」という自信や意欲につながったのでしょう。

遊びの中で子どもは何度も失敗します。子ども自身が試行錯誤しながら身体の機能を成長させるのはもちろん、必要な時に励まし支えてくれる大人の存在が、とても大切です。その安心感の中で子どもは、身体だけでなく挑戦する気持ちも育つのですね。

教えてくれたひと

増山由香里さん

札幌国際大准教授(発達心理学)

1972年生まれ、岩見沢市出身。岩見沢東高から藤女子短大(当時)へ進み、幼稚園教諭、保育士資格を取得。保育現場で勤務後、北大に編入し、北大大学院に進んで修士課程修了。旭川大学短期大学部准教授などを経て2017年から札幌国際大人文学部准教授。保育現場での出合いから、おもちゃや絵本への関心を深めた。編著に「具材―ごっこ遊びを支える道具」(17年、庭プレス)がある。

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