賛否両論の子ども用ハーネス、子どもを守る「命綱」として理解を 「ママトーク」アンケートより

​ハ​ー​ネ​ス​を​つ​け​て​母​親​と​と​も​に​札​幌​市​内​を​歩​く​2​歳​の​子​ど​も​

道路への飛び出しなどを防ぐ「子ども用のハーネス」に対する賛否が、テレビやSNSなどで話題です。迷子ひもとも呼ばれ、近年は子どもが背負うリュックに付いているひもを、親が持つタイプが多いようです。北海道新聞の子育てウェブメディア「mamatalk(ママトーク)」は、ハーネスについてアンケートを実施。子どもを守る「命綱」として、理解を求める声が寄せられました。

不安や不便を解消/見た目否定された/「命綱」だと知って

「毎日のように使っている。無くてはならないもの」。1歳8カ月の長女を育てる札幌市西区の主婦安田あやかさん(25)は、そう力を込めます。

子ども用ハーネス使い始めたのは1歳ごろ。長女は手をつないでもすぐに離し、道路に飛び出そうとしたり、買い物中にそばから離れたりしていました。今は買い物や散歩で使っており「道路への飛び出しを防げるし、近くにいてくれる安心感がある」と話します。

使用中、高齢女性から「昔もあったらよかった」と声を掛けられたことも。一方で、同世代の母親に「あんなの犬じゃん」と言われたこともありました。安田さんは「自分の子がおとなしいと肯定しにくいのは分かる。でも、必要な人もいると理解してほしい」と話します。

札幌市厚別区の自営業中村友美さん(34)は、長男(6)が3歳ごろ、ハーネスを使っていました。長男に注意欠陥多動性障害(ADHD)があり、買い物に行って財布を出そうと手を離したら、数秒でいなくなることがあったためでした。

中村さんは「使う側にはいろんな事情がある。批判する人は、子どもが動き回る大変さを経験してみてほしい」と訴えます。

道内で3店舗を展開するベビー用品販売「赤ちゃん本舗」(大阪市)は、20年ほど前からハーネスの販売を始めました。近年は70~90センチ程度のひもがついたリュック型が人気です。広報部長の岩永優美さん(49)は「笑顔で子育てできるよう、不安や不便を解消したいという要望に応えたい」と話します。

子ども用ハーネスを使ったことはありますか

北海道新聞社が9~16日に実施したアンケートは、20~60代の男女計143人が回答しました。子どもがいる131人のうち、ハーネスを「使っている」と答えた人は6%、「使っていた」は21%、「使っていない」は73%でした。

使っている、または使っていた時期は、子どもが1~3歳のころが中心でした。使用の理由は「下の子を妊娠している時、全力で子どもを追いかけられなかったため」(札幌、女性33歳)、「双子なので、雨の日に傘をさして道路沿いを歩く時に使った」(上川管内、女性33歳)など、やむを得ず使う様子がうかがえました。

使用中に掛けられた言葉としては「老夫婦に『犬みたい』と言われ、悔しかった」(札幌、女性25歳)など否定的な回答が7件ありました。「子どもの命を守って偉いねと言われた」(千歳、女性33歳)など肯定的な声もありました。

アンケート結果

賛否が分かれていることについて、ハーネスを使っている、または使っていた回答者からは「子どもの命を守るためにつけているのに、否定される理由が理解できない」(釧路、女性30歳)、「必要にならないと便利さは分からない。子どもの命綱だと知ってほしい」(札幌、女性32歳)と理解を求める意見が寄せられました。

使っていない、または子どもがいない回答者からも「反対意見も理解できるが、子どもの安全が守られるので賛成」(札幌、男性29歳)など、肯定的な意見が大半でした。

一方で「使いたくても親世代の目が気になる」(苫小牧、女性30歳)、「危険な場所以外でも、子どもを誘導するためだけに使っている親がいるのも否定される一因」(札幌、女性31歳)との声もありました。

まず声掛け、急に引っ張らない 小児科医・三戸さんに聞く

子ども用ハーネスを利用する際の注意点を、北海道医師会の常任理事で小児科医の三戸和昭さん(70)に聞きました。

三戸和昭さん

ハーネスをしていても、手をつなぐのが基本です。子どもが手を離してしまったら「止まって」「おいで」などと声を掛け、急に引っ張るのはやめましょう。ハーネスをしていることで危険から守れることはありますが、使い方を間違えると事故につながります。

使う際は、なるべく人が少ない場所にしましょう。人が多いと、ひも部分に歩行者などが引っ掛かり、反動で子どもが転倒する危険があります。強く引っ張ることも、転倒事故につながります。手首に装着するタイプを使う場合、子どもの腕が後ろに強く引っ張られると、肘の関節が外れる可能性があります。

ハーネスを使わずに子どもと外出する時は、手をつなぐ場所と、自由に動いていい場所を区分していると思います。これは子どもに危ない場所や安全な場所を教えることにつながります。ハーネスはやむを得ない場合に使い、こうした会話や接触の機会を大切にしてほしいと思います。

取材・文/尾張めぐみ(北海道新聞記者)

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