幼少期から性教育 子どもの大切な体を守るために親ができること

写真はイメージ(Ushico / PIXTA)

子どもを性犯罪の被害者にも加害者にもしたくない。自分の体を大切にして健やかに育ってほしい―。そんな思いから性教育の必要性を感じていても、「何をどう話せばいいか分からない」「もう少し大きくなってからでも…」と先送りしていませんか。専門家は「生まれた時から保護者ができることがある」といいます。

親が不用意に触らない 他人との境界線覚える

「性教育を始めたいが、どうすればいいかわからない」。6歳の長女、3歳と1歳の息子を育てる千歳市の主婦、富樫弘子さん(38)は悩んでいます。息子たちが自分たちの性器を触ったり引っ張ったりして遊んでいたり、長女から「赤ちゃんはどうやってできるの」と聞かれたり。親として、教えなければならない場面が増えてきました。

自身は親から性教育を受けた記憶はなく手探りです。ネットなどで調べて「体の大事な場所だから大切にしようね」と声を掛け、「パパとママが仲良くして、精子と卵子が出合うんだよ」と答えました。「どこまで包み隠さず教えてよいのでしょうか」

助産師らでつくるNPO団体「ピーチハウス」(札幌)は、保護者のための性の講座「からだの科学」を開いています。乳幼児の保護者を対象にした入門編講座を担当する吉裕子さん(53)は、「性教育は単に妊娠・出産の仕組みにとどまらず、子どもがより健康に安全に生きるための、『健康教育』。生まれた時から始めてほしい」と強調します。

吉裕子さん

吉裕子さん

まず「自分の体は大切だ」という子どもの肌感覚を養います。スキンシップは大事ですが、親も不用意に予告なく子どもの体を触らない意識を持ちましょう。赤ちゃんの時でも、服を着替えさせる時「脱ごうね」と一言声をかけたいですね。吉さんによると「小さい頃から健全な触れられ方をすることで、自分と他人の境界線を覚えていく」といいます。

性を否定的にとらえず、自分の体を好きになってもらいます。例えばおむつ交換の時、「ばっちいね」といったネガティブな言葉が出がちです。代わりに「いいうんちが出たね」「きれいになって気持ち良いね」と肯定的に伝えるのが効果的です。

大切な体を守るために親が幼少期からできること

言葉が出始めたら伝えて プライベートゾーン教える

言葉が出始めたら、「ペニス」「精巣」「ワギナ」「卵巣」など性器の科学的な名称とその働きを教えます。目や口、といった体の部位は知っているのに、性器の名を知らない子は多いそうです。一人で立てるようになったら自分の性器は自分で洗うよう促します。「正しい名前と清潔に保つ方法を知ることは健康上も必要です。他人に簡単に触らせないと学ぶ効果もあります」

その上で、三つの「プライベートゾーン」を教えます。まず「口」。キスをされたくない時、嫌と言っていいし、相手にも勝手にキスしない。次に「胸」。プライベートゾーンは「水着で隠れるところ」と説明され、男の子はパンツをはいている絵を使われることが多いですが、吉さんは「性別に関係なく、胸は大事な場所です」と指摘します。そして性器。もし誰かに触られそうになったら、「いやだ!」と、とにかく逃げて、安心できる人に相談するよう繰り返し教えます。

プライベートゾーンを誰かに触られそうになったら…

子どもが自分の性器を触っていたら、無理にやめさせず、体に興味を持ち始めたタイミングととらえ、自分で適切にケアできるよう促しましょう。吉さんは《1》清潔な手で触る《2》トイレや布団の中などプライベートな場所で触る―の二つのルールを子どもと共有し、見守るよう勧めています。

「赤ちゃんはどうやってできるの」にはどう答えればいいのでしょうか。吉さんの講座では妊娠や出産の仕組みについて、「大人になったら男の人のペニスが女の人のワギナに入って、精子を卵子に届けるんだよ」など、幼児期から正確に伝えることを推奨しています。

子どもの命を守るため、と思っても「言いづらい」と感じる人もいるでしょう。吉さんによると、過去に性被害を受けたために、精神的にハードルが高い人もいます。「無理せず背負い込まないで。友人らと協力して行うのも手です。役に立つ関連の絵本もたくさん出ています。その子との関係性の中で、ベストなやり方を探って」と助言しています。

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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