人気幼稚園、過熱する“幼活” 前日から並び願書提出/1~2歳から「プレ」通い

幼稚園の入園願書を受け取りに来た保護者たち。人気の園に入るには、プレ保育に通ったり、願書提出時に長時間並ぶ必要があるケースもある

子どもを預ける保育所を探す“保活”の大変さが問題となる中、幼い子を持つ親からは「幼稚園に入れるのも大変」との声が漏れる。一部の人気園では願書提出時に前日から並んだり、優先入園枠を求め、幼稚園が園に慣れてもらうことなどを目的に行っている「プレ保育」に1~2歳から通わせるケースもある。“幼活”が過熱する背景には、給食や預かり保育など、保育所が行っているサービスを提供し、従来は子どもを保育所に通わせていた働く親の需要を幼稚園が取り込んでいることなどもあるようだ。

完全給食や預かり保育提供 働く親の需要取り込む

「どこの幼稚園にも入れないのでは、と青ざめました」。育児休暇中の札幌市北区の女性教員(37)はそう振り返る。来春から年少クラスに通う長男(2)の幼活を始めたのは1年前。近くの幼稚園に電話をかけると「プレ保育に通う子を優先的に入れるが、息子さんの学年は既にキャンセル待ち」と言われた。

慌てて別の園に聞くと「プレは月1回行っているので、そのつど電話で申し込んで」と言われた。しかし、申込日は電話が殺到してつながりにくく、長男と次男(1)をあやしながら電話をかけ続けるのは難しかった。結局、夫が仕事中に電話をかけてくれてプレに通い、優先枠を得ることができたが「保育所と違い、もっと簡単に入れると思ったのに」と話す。

幼稚園の入園手続きは園により異なり、定員分のみを先着順で願書配布や受け付けを行う園もあれば、希望者が多い場合には抽選を行う園もある。

同市中央区の主婦(40)は目当ての園の願書が先着順で配布された15日、朝5時半から園に並んだ。プレ保育に通っているが、きょうだいが在園する子も優先権がある。「今年は『きょうだい』の子が多いため『プレでも入れない可能性がある』と聞き、不安だった」と願書を受け取りほっとした表情を見せた。

道によると、道内の幼稚園の定員充足率は今年5月現在で平均74.6%で、2年前の77.4%から2.8ポイント低下した。一部の地域や園で入りづらくなってはいるものの、空きのある園も多いようだ。

入りづらい園は、立地や教育・保育内容に加え、「保育所的なサービス」が充実しているところが目立つ。完全給食を提供し、預かり保育も行う帯広の森幼稚園(帯広市)は今年、年少クラスの入園受け付けを中止した。プレ保育やきょうだいの在園など優先枠に入る子どもで定員が埋まったためで、運営する学校法人は「弁当を作る必要がなく、預かり保育を午後6時半まで手頃な料金で行っている点などが、仕事を持つ親にも喜ばれている」とする。

願書受け付けの3日ほど前から親が並ぶことで知られていた札幌市中央区の大通幼稚園も「希望者がこれほど増えたのは、預かり保育を始めた10年ほど前から」という。同園は「公平性に配慮して」(同園)、今年から先着順をやめて抽選にした。

プレ保育は子どもに必要なのだろうか。親にとっては、園の雰囲気を知り、子どもとの相性をみることができる一方で、幼稚園側には定員割れを抑える「園児の青田買い」の意味合いもある。

北海道文教大の小田進一教授(保育学)は、幼稚園を選ぶ際に《1》子どもが自ら育っていく力(非認知的能力)の育成を教育の中心にすえているかどうか《2》園の方針を一方的に伝えるだけでなく、保護者の話を聞く姿勢があるかどうか《3》園児が生き生きとしているか―の3点をみるよう勧める。「子どもと園の相性もある。体験入園の機会などに、子どもが自分らしさを出せているかをみて判断すると良いでしょう」とアドバイスしている。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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