幼児食、子どもの意欲引き出して 世話焼きすぎず気長に

写真はイメージ(NORi / PIXTA)

ご飯と肉ばかりで野菜を食べない。食事中に立ち上がったり、遊び食べをしたり…。離乳食から幼児食に移行し、自己主張の強くなる1歳半以降、食の悩みは尽きません。どうすれば好き嫌いせず、楽しく食事が取れるのでしょう。食欲の秋を迎え、専門家に聞きました。

成長に合わせ 適度な固さを

「野菜はキュウリしか食べてくれないんです」。小樽市の会社員中川彩さん(29)は、5歳と4歳の息子の野菜嫌いに手を焼いています。2人とも離乳食期は何でも食べていたのに、2歳頃から好き嫌いするようになりました。カレーや豚汁に野菜を小さく刻んで入れるなど、工夫を重ねています。「食事中にすぐ立ち上がるのも悩み」とのことです。

3人姉妹を育てる同市の主婦、山入端(やまには)香織さん(37)の三女(2)も、野菜を「いやいや」と拒みます。みそ汁は、中の具を食べず汁だけ飲むという強情ぶりです。食が細いのは心配ですが、「いつかは食べるだろう、と気長に構えています」

石田しづえさん

石田しづえさん

管理栄養士として保育所勤務歴19年の、藤女子大人間生活学部非常勤講師、石田しづえさん(53)=給食経営管理学=は「嫌いなものがあっても、心配ない。今食べられるもので補えばいい」と話しています。

石田さんによると、味覚の基本となる要素(基本味)は、《1》甘味《2》うま味《3》塩味《4》酸味《5》苦味、の五つあります。このうち、《1》~《3》は体に必要な栄養として、本能的に体が欲します。一方、「酸味」は腐敗、「苦味」は毒のシグナルとして、幼児には受け入れがたいのです。

石田さんは「酸っぱさや苦みのある食材を食べられないのは、当たり前。今は無理でも、いつか食べられるよう、幼児期は『食の受容性』を広げることが大切です」とアドバイスします。

まずは、食べる機会を与えるため、食卓に載せること。刻んで好物に混ぜるのもいいでしょう。親が「ピーマンは最初苦いけど、かんでると甘くなってくるよ」など感想を伝えたり、「食べると体が強くなるよ」と前向きな声かけをしたりするのも効果的です。

一緒に料理するのも、食に興味を持つきっかけになります。石田さんは「たとえばシメジを手で割く手伝いをさせる。それだけで、『自分が作ったみそ汁』になります」と話します。カボチャ団子や野菜チップ=レシピ参照=など、秋の素材を使った料理もおすすめです。

秋の食材を使った幼児のためのレシピ

北大大学院教育学研究院准教授の川田学さん(48)=発達心理学=は、「人間の味覚は変わっていくもの。母乳やミルクから、固形食に移行する時期は胃腸の状態も変化するので、食べ物の好みが変わるのは自然なことです」と話します。

食べる意欲を促すために親は何ができるのでしょうか。川田さんは「食の楽しみは味だけではなく、『かみ応えがある』といった機能的な快感もある」と指摘します。奥歯が生えてくる1歳半ごろ、かむ力は格段に伸びます。離乳食期のまま、柔らかいひとくちサイズでは、幼児の口の「活動欲求」に十分に応えられません。歯とあごの筋肉を存分に使う適度な固さと大きさの食材が食欲を増進させます。

川田学さん

川田学さん

心理面では、子どもが「自分で食べたい」と思う気持ちに寄りそうことが大切です。上手に食べられない幼児に親はつい世話を焼きがちですが、それがストレスになり、食事が嫌な時間になってしまうこともあります。

離乳食期は子どもを先に食べさせてから親は後に、という家庭も多いでしょう。ですが、幼児期からは大人も子どもと同じタイミングで食卓を囲むのが望ましいのです。「食は社会的なもの。人が食べていると、自分も食べたくなります」と川田さん。

食事中にスプーンで皿をたたいたり、食べ物をこねたりする「遊び食べ」には、食器を陶器に変えてみるのも手です。プラスチックは軽く、投げても割れないので、子どもは雑に扱いがち。川田さんは「陶器は価値のあるものという実感がわきやすい。スプーンやフォークも金属にするのがおすすめです」と話しています。

幼児食の心構え

取材・文/有田麻子(北海道新聞記者)

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