• 家庭的保育 居宅で親身に 0~2歳児を5人まで 子どもの発達に合わせ対応

    家庭的保育事業者として自宅で乳幼児を預かる浜口さん(左)。子どもが遊ぶ居間の家具には囲いをつけています(小川正成撮影)
    市町村の認可を受け、主に保育者の自宅で0~2歳児を預かる「家庭的保育」。子どもの定員は通常5人で、きめ細かい保育が利点です。一方、利用できる時間は保育所より短い場合があり、3歳以降は新たに保育所などへの入園が必要になります。事業者が少なく、認知度の低さも課題になっています。

    「ほら見て、うまくできたよ!」。札幌市東区の住宅街。一軒家の1階で、乳幼児4人がままごとセットや木のおもちゃを手に元気よく動き回っていました。家庭的保育事業者の浜口早苗さん(59)宅の居間です。

    安全のため床一面にクッションマットが敷かれ、テレビやオーディオの周りには囲いがしてあります。浜口さんは補助の保育者1人と一緒に子どもと遊び、抱きかかえてあやしました。「少人数なので大勢の中の1人ではなく、その子の発達速度に合わせて保育できます。子どもの成長を肌で感じられます」

    安心の居場所に

    職員は浜口さんを含む保育士3人や調理師ら計8人。現在は1~2歳の4人をほぼ毎日預かっています。浜口さんは「私たちは乳幼児が初めて会う他人。安心できる居場所にしたいです」と話します。コロナ対策で市の補助を受け空気清浄機も購入しました。

    浜口さんは道内の保育所に勤めた後、2011年に家庭的保育を始めました。自宅の1階は大半を保育用スペースにし、1階のトイレは子どもと職員専用です。同居の夫と息子は保育中、2階で過ごしています。

    1歳の息子を浜口さんに預けている札幌市東区のパート木幡さゆりさん(36)は、いま小学1年の娘も0歳から預けていました。家庭的保育については知らなかったそうで、友人に紹介されました。「最初は『普通の家で保育するんだ』と驚きましたが、子どもをマンツーマンのようにしっかり見てくれて、娘はトイレトレーニングも問題なくできました。育児相談にも親身に応じてもらい、助かっています」と話します。

    家庭的保育は原則8時間です。浜口さんは午前9時~午後5時で、午前8時からの延長保育に応じています。午前7時~午後6時が標準の札幌市認可保育所より短く、土日祝日は休みです。「午後6時まで延長すると家事ができなくなります」と浜口さん。札幌市によると、市内の家庭的保育9事業者のうち午後6時まで預かるのは5事業者です。

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    開設に二の足も

    家庭的保育は「保育ママ」とも呼ばれ、待機児童対策として10年度に国の補助事業になりました。認可保育所と同じ設置基準が適用され、遊びに適した庭か、徒歩圏に公園が必要です。定員は保育者1人なら3人、補助者が1人つくと5人。保育所や幼稚園、認定こども園との連携が義務づけられており、3歳以降の転園先の候補になります。事業者になるための条件は保育士や研修を受けた人など自治体によって異なります。

    厚生労働省によると、昨年4月1日時点の利用者数は全国3800人(前年比75人減)で、認可保育事業全体の1.2%にとどまります。個人で乳幼児を預かる負担感が大きい上、自宅での保育には家族の協力が不可欠で、開設したくても二の足を踏む人が多いとされます。

    道内では、個人を中心とする民間の14事業者と、十勝管内足寄町が家庭的保育を運営しています(8月16日時点)。民間のうち9事業者は札幌市内。そのほか釧路市に2事業者、江別市と後志管内蘭越町、根室管内別海町に各1事業者。札幌市以外は午後5時以降も預かる所が多いです。

    札幌市は現在、新規事業者を募集していません。その理由として担当者は「待機児童対策としては、定員が最大19人の小規模保育が増える方が効率的なため」としています。

    駒沢女子短大名誉教授・福川さんに聞く
    利用者の満足度高く

    福川須美さん
    福川須美さん

    NPO法人家庭的保育全国連絡協議会(横浜市)の理事で駒沢女子短大名誉教授の福川須美さん=東京都在住=に、家庭的保育の経緯や課題を聞きました。

    戦後、産休明けからの保育需要への対策を迫られた都市部の自治体が制度化したのが、家庭的保育の始まりです。保育所での乳児保育が広がり、家庭的保育は減りましたが、1992年に家庭的保育者が全国連絡組織(現在の協議会)を結成し、利用者とともに自治体に存続を働きかけました。

    その後、待機児童対策として再び注目され、2000年に国の補助事業になりました。ただ、定員が5人以下と少なく、国は15年に定員最大19人の小規模保育を認可。自治体はこちらの普及に注力しています。

    家庭的保育の利用者の満足度は高く、2013年に「こども未来財団」(東京)が行った調査では保育内容や保育者について、いずれも95%以上が「満足」と答えています。課題は保育者の孤立防止で、自治体間で支援体制の差が大きい。保育所など連携施設の確保を進め、連携内容も充実させる必要があります。保育の質を確保するための研修も重要です。

    きめ細かく3歳未満児を保育できる家庭的保育は、保育所の補完的役割を超えた意義があります。自治体は保護者が子を預ける際の選択肢になるよう制度の知名度を高め、既存の子育て機関との連携を進めるべきです。例えば3歳になった時、他の保育施設に円滑に移れる支援が求められます。

    取材・文/町田誠(北海道新聞編集委員)

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