連載コラム「絵本はママを育ててくれる」第5回

【だめよ、デイビッド!】仲直りに効きます

今年1月にチェンマイへ。存分に泥遊びを楽しむ息子の姿を見るのはいいものです(撮影・松井聡美さん 現地在住、札幌市出身)

ほんとは叱りたくない、日本暮らしに戸惑う息子

息子が3歳になったころ、生活の拠点をタイのチェンマイから札幌へ移しました。同時に急増したのが、私の発する「だめよ!!」です。

例えばこんなふう。

大好きな泥遊びの後、タイでは服の上から水を浴びて終わりだったのに、日本に来たとたん「そのまま家に入っちゃだめ!」。家の中も庭も裸足(はだし)で走り回っていたのが、今は「靴はちゃんとはいて! 脱いだらそろえなさい!」

必死にしかる私への戸惑いや反発が限界に達したのか、その日の息子は朝からご機嫌斜め。騒ぐわ、汚すわ、言うことは聞かないわで、こちらも「だめ」のオンパレード。息子の混乱も分かるだけに、心底疲れ果てました。

こんな時は「だめよ、デイビッド!」に助けてもらおう。裸で外へ出て行っちゃう、フライパンをお玉でたたきまくる、おもちゃは散らかしっぱなし。実に楽しそうな表情を見ているうち、スーッと肩の力が抜けていきます。

「デイビッドとあなたは一緒だね。だめだめ言っちゃうお母さんもおんなじ」と笑ったら、息子の心もほぐれていくのが分かりました。最後は「大好きよ」と息子を抱きしめさせてくれたこの絵本、仲直りの特効薬です。

今回登場した絵本

「だめよ、デイビッド!」

「だめよ、デイビッド!」
デイビッド・シャノン作、小川仁央訳 評論社

裏表紙いっぱいに「No」の文字、扉には仁王立ちのママを描いた親目線の作品。育児のプレッシャーに悩む私たちも、実は“ダメ出し”される立場。無条件に「Yes!」を伝えてくれる子どもへのいとおしさが湧いてきます。

谷岡 碧

2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。

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