#10|7つの命が家族の仲間入り! 共食い、上陸…大騒ぎの日々
2021/07/28「晴れ ときどき子育て日和」#10
札幌市で朗読活動を行い、2018~19年に北海道新聞で「絵本はママを育ててくれる」を連載していた谷岡碧さんが、2人の子どもの母となった日々を綴ります。(バックナンバーはこちら)5月のある日、息子がお手紙をくれました。
「おかあさんへ エゾサンショウウオの赤ちゃんをうちでかいたいです。りょうたくんがわけてくれます。おねがいします。はるより」
こんな可愛らしいお手紙をもらって、断ることなんてできましょうか? 「もちろん、いいよ!」と返事をすると、息子は大喜びしました。しかし、待てよ…エ…エゾサンショウウオってなんだろ。恐る恐るネット検索すると、そこにはヌルヌルとした身体が特徴の両生類の姿があったのです。
うーーん、可愛がれるだろうか…。しかし、今さら「ダメ」とは言えない。かくして、カエルのオタマジャクシに似たエゾサンショウウオの赤ちゃん7匹がやってきたのです。
エッちゃん、ゾッちゃん、サッちゃん、ンッちゃん、ショッちゃん、ウッちゃん、ウオちゃんと、全く工夫のない名前をつけて、飼育スタート。元気な7匹は何でもよく食べ、目に見えて大きくなっていきました。
しかしある夜、事件が起こりました。水槽の水替えの時、元気な1匹がシンクに飛び出したのです。すぐ水槽に戻したものの、弱った個体はあっという間に仲間に食べられてしまいました。そう、エゾサンショウウオの幼生は共食いするのです…。
ウッちゃーーーーーーん…!!!(いや、サッちゃんかも…見分けはつきません)
「本当にごめんなさい、ウッちゃんが食べられてしまった」と謝ると、息子は寂しそうに「(ウッちゃんの名前をウオちゃんに足すことにして)今日からウウオちゃんだね…」とつぶやいて登校していきました。
その日から、水替えは慎重の上に慎重を期する厳粛な作業になりました。フンはできるだけスポイトで吸引、共食い防止のため餌は大好物の冷凍アカムシに。それでも1匹は共食いの犠牲になり、食の細かった1匹も死んでしまい、泣く泣く埋葬しました。
水槽の中に置いた石に上陸するまでに成長したエゾサンショウウオ 4匹となったエゾサンショウウオは日に日に大きくなり、手が生え、足が生え、エラが小さくなり、成体へと姿を変えていきました。水槽を大きいものに替え、酸素ポンプも備えて迎えた7月のある日、とうとう4匹が水槽の中に置いた石に上陸したのです! 「頑張ったね…よく、ここまで大きくなって(涙)」 今は息子より、私自身がヨチヨチ歩きのエゾサンショウウオに夢中です。
特に生き物が好きでもなかったのに、ましてや両生類を可愛がれるなんて…! 東京で働いている時は自分のこと以外、構う余裕はありませんでした。でも今は、自分より他の誰かに時間と愛情をかけ、それを楽しむこと、「命を育む以上に尊いものはない」と信じること、それが私の「芯」になっています。
好奇心旺盛な息子は、学校からひまわりの種をもらってきたり、トマトの苗をもらってきたり…我が家には今、手間ひまのかかるものがいっぱい。けれど、今朝も太陽の方を向いて立派に育つヒマワリの本葉と、上陸して気持ちよさそうにしているエゾサンショウウオを見て、ニコニコしている私がいます。みんな、元気に大きくなぁれ。
PROFILE
谷岡 碧(たにおか・みどり)
2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成。21年春から、主婦と生活社の女性向けサイト「CHANTO WEB」でライターとしても活動中。夫と小学1年生の長男、2歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。最新の記事
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