#4|<バスにのって> 途中下車でも乗り換えても 行き先は自分しだい
「絵本はママを育ててくれる」#4
札幌で朗読活動を行う谷岡碧さんが、在京テレビ局記者を辞めて移住したタイでの子育てと、日々を支えた絵本についてつづります。私たち家族が住んでいたタイのチェンマイは、夫婦の出会いの場所でもあります。
学生時代、エイズウイルスに母子感染した孤児の施設で、ボランティア仲間として知り合いました。社会に出てからも休みを合わせて東京を離れ、施設を紹介する映像を制作しました。年に数回、子どもたちと会うのは何よりの楽しみ。2人とも病を経て「生活を変えたい」と思ったとき、施設を運営するNGOで働くことに迷いはありませんでした。
でも、愛と志を抱いて始めた仕事はすぐ行き詰まり、わずか2年で退職。私たちの力不足も、心のオアシスを職場にしてしまった難しさもありました。
このころ、息子によく読んだのが「バスにのって」です。主人公はなかなかバスに乗れませんが、少しずつそれを受け入れます。
私と夫は、満員の高速バスに詰め込まれるように東京で暮らし、乗り換えてやっとたどり着いた場所では、うまくいきませんでした。
乗り物好きの息子の隣で、目を真っ赤にして聞いていた夫のひと言がいま、故郷で新たな活動をしている私に響きます。「バスに乗るだけが、人生じゃないんだなあ」
トップ写真説明/いつかまたアジアの子どもの幸せに関わる仕事をしたい。夫の功一(41)はいつも同じ方向へ進んでいる大切な仲間でもあります=1月(撮影・松井聡美さん 現地在住、札幌市出身)
「バスにのって」
(荒井良二・作 偕成社)繰り返す「トントンパットン」という言葉が物語のアクセント。バスを待つ「ぼく」のラジオから流れる音楽です。主人公の心の変化を映して読むと深みが出ますが、どう変えていくのかは読み手次第。答えが幾通りもある物語です。
(2018年6月9日付 北海道新聞「週刊じぶん」掲載)
PROFILE
谷岡 碧(たにおか・みどり)
2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。
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