連載コラム「絵本はママを育ててくれる」第4回
【バスにのって】人生、進み方はいろいろ
途中下車でも乗り換えても、行き先は自分しだい
私たち家族が住んでいたタイのチェンマイは、夫婦の出会いの場所でもあります。
学生時代、エイズウイルスに母子感染した孤児の施設で、ボランティア仲間として知り合いました。社会に出てからも休みを合わせて東京を離れ、施設を紹介する映像を制作しました。年に数回、子どもたちと会うのは何よりの楽しみ。2人とも病を経て「生活を変えたい」と思ったとき、施設を運営するNGOで働くことに迷いはありませんでした。
でも、愛と志を抱いて始めた仕事はすぐ行き詰まり、わずか2年で退職。私たちの力不足も、心のオアシスを職場にしてしまった難しさもありました。
このころ、息子によく読んだのが「バスにのって」です。主人公はなかなかバスに乗れませんが、少しずつそれを受け入れます。
私と夫は、満員の高速バスに詰め込まれるように東京で暮らし、乗り換えてやっとたどり着いた場所では、うまくいきませんでした。
乗り物好きの息子の隣で、目を真っ赤にして聞いていた夫のひと言がいま、故郷で新たな活動をしている私に響きます。「バスに乗るだけが、人生じゃないんだなあ」
今回登場した絵本
「バスにのって」
荒井良二・作 偕成社
繰り返す「トントンパットン」という言葉が物語のアクセント。バスを待つ「ぼく」のラジオから流れる音楽です。主人公の心の変化を映して読むと深みが出ますが、どう変えていくのかは読み手次第。答えが幾通りもある物語です。
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