#3|<よるくま> 励ましの言葉に代えて 病気のママ友へ贈った1冊
「絵本はママを育ててくれる」#3
札幌で朗読活動を行う谷岡碧さんが、在京テレビ局記者を辞めて移住したタイでの子育てと、日々を支えた絵本についてつづります。タイで出産した長男が1歳になるころ、ようやくママ友ができました。日本人の彼女は、タイ人の夫との間にうちの息子と同じ年の男の子がいました。成長を喜び合いながら家を行き来したり、遊びに出かけたりしました。
彼女が目に見えて痩せ始めたのは一昨年の夏。「最近、おなかが痛いの」と不安げに打ち明けてくれた数日後に緊急手術を受け、がんと診断されました。この時すでに、かなり進行していました。
お見舞いに行くと、いつもママべったりの彼女の息子が、おとなしくお父さんとベッドの傍らに。何かを察し、じっと耐えているようでした。寂しいだろう、不安だろう。それを見ながら何もできないママは、どんなに心が痛いだろう。
その時、彼女へ贈った絵本が「よるくま」です。小さな男の子とクマの子が、クマのお母さんを探しに行く物語です。再会の時、お母さんが子グマにかけたのは、奇跡のように美しい言葉。病床の彼女がそっとつぶやき、抱っこした息子の温かさを思い出して頑張ってくれるよう願いました。
その後、彼女は治療に専念して病を克服。家族とチェンマイで暮らしています。
(記事は「週刊じぶん」掲載時と一部変更しています)
トップ写真説明/久々にタイで再会したママ友はすっかり元気になっていました。私と息子(右)ものんびり=今年1月(撮影・松井聡美さん 現地在住、札幌市出身)
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今回登場した絵本
「よるくま」
(酒井駒子・作 偕成社)夜の群青と漆黒、あかりや月星の黄で彩られた1冊。子どもが眠った後、そっと仕事へ出た母グマに共感する、働くママも多いとか。抱っこのぬくもりにほっとするのは、子どもだけじゃありません。
(2018年5月12日付 北海道新聞「週刊じぶん」掲載)
PROFILE
谷岡 碧(たにおか・みどり)
2007年にテレビ東京へ入社、記者として秋葉原連続殺傷事件や東日本大震災の被災地を取材。12年に退社、チェンマイへ移住しNGOスタッフとして勤務。その後退職し17年に札幌へ帰郷、幼なじみのピアニストとユニット「enets」(エネッツ)を立ち上げ、絵本の読み聞かせとピアノ演奏によるコンサートを続けている。長男(4)と18年4月生まれの長女を育てる母として奮闘中。札幌市出身。
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