子どもの付き添い入院 コロナ下で(下)|感染対策 交代や面会制限

写真はイメージ(Komaer /PIXTA)

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「体力的にも精神的にも限界だった」―。札幌市の女性(32)は今春、市内の病院に3歳の娘の付き添い入院をして、あらためてコロナ下の過酷さを実感しました。

病院では新型コロナウイルスの感染防止のため、入院中の付き添い者を1人だけに制限、他の家族との面会も禁止していたからです。

女性は2年前の入院と同様、夫と交代しながら24時間態勢での付き添いを想定していました。しかし、心臓病を治療する娘の約2週間の入院期間を1人で付き添わざるを得ず、パートの仕事は諦めました。

院内でも感染対策が徹底され、付き添い者も病室以外の移動は必要最小限を求められました。子どもと2人きりの入院生活で気持ちがふさぎ込んだといいます。「感染対策のため仕方がない。でも、本当にしんどかった」

厚生労働省は昨年2月、医療機関に対し、感染の拡大状況などを踏まえ、必要な場合には面会について一定の制限を設けることや、面会する人に熱があれば断るといった対応を検討することを求めました。

子どもが入院する道内の病院(計46施設)を対象に、北海道新聞社がアンケートしたところ、回答した31病院すべてで、感染予防対策として、付き添いや面会について何らかの制限をしていました。

面会は、「週1回15分」「親のみ可」など時間や回数、面会者の制限を9割以上の病院が実施。このうち「面会休止」は16施設と半数を占めました。付き添いは、「交代を制限・禁止」している病院が7割の23施設で、「やむを得ない場合のみ、PCR検査で陰性を確認したら可」とするところもありました。

コロナ下での道内の小児病等の状況

付き添いの交代や面会を原則禁止としている道央の総合病院の小児科部長は、病院の事情に理解を求めます。「重い疾患のある子どもほど感染症に弱く、コロナにかかったら重症化しやすい。感染患者が出れば、病院全体の診療を停止しなければならない可能性も考えられる」

負担増し「心の健康」悪化も

入院した子どもを抱える家族を支援するNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」(東京)が5月、付き添い入院した家族にコロナ下での影響についてアンケートしたところ、回答した188人の7割が心の状態を「悪い・やや悪い」と答えました。同法人は「面会や付き添いの制限などにより、家族は物理的・心理的負担が増し、『心の健康の悪化』も引き起こされている」と指摘します。

小樽市のシングルマザーの女性(45)は、中学1年の長男(12)が4月に札幌市内の病院に入院していた約1週間、一度も直接会うことができませんでした。中学生以上は保護者の付き添いを不要とする病院で、感染予防として面会休止となっていたためです。「子どもが心配でたまらなかった」

でも、病棟の看護師が毎日、電話で子どもの様子を報告してくれた。1度だけ院内のタブレットと女性のスマートフォンで、長男とオンラインで面会もできました。女性は「困難な状況の中、病院側の配慮がありがたかった」と話します。

コロナによる影響で、会うことができない子どもと家族のために、オンライン面会やこまめな電話報告などを取り入れる病院は多いです。道内では少なくとも18の病院が導入していました。

病院の事情と家族の希望が折り合うところはどこなのか、模索が続きます-。

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

家族にも支え必要
日本医療保育学会の吾田富士子理事長(藤女子大教授)

吾田富士子理事長

コロナ下、入院中の子どもの保護者の負担は増しています。

病院は治療する場ではありますが、大人と違い、そこで成長発達していく子どもには、保育の視点も必要になります。

今の保育の世界では、子どもだけでなく、その家族を支えなければ、本当の意味での子どもの幸せにつながらないと認識されています。

多様な家族があるように、付き添いのあり方も多様であることが求められます。

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