子どもの入院「原則付き添い」8割 食事対応「ない」6割 全道病院調査

写真はイメージ(mits / PIXTA)

道内の小児病棟など46病院(診療報酬「小児入院医療管理料」を届け出している病院)を対象に、北海道新聞社がアンケートを行ったところ、回答した病院の8割に当たる26病院が、「乳幼児」または「小学生以下」の子どもの入院時に、保護者の付き添いを原則としていました。子どもの年齢に関係なく「保護者の希望がなければ、付き添わなくてもよい」とする病院は1割でした。


アンケートは6月下旬~7月上旬、「小児病棟における入院・付き添い入院」をテーマに実施。31病院が回答し、回答率は67%でした。

26病院の内訳は「乳幼児は原則付き添い」が11病院、「小学生以下は原則付き添い」は15病院。年齢に制限なく一律に「保護者が希望すれば付き添いが可能」は4病院、「乳幼児・小学生以下に限り、希望すれば可能」は1病院でした。

母親に限定も

付き添いは両親のほか、多くの病院が祖父母や親戚にも認めていました。一方、母に限定する病院もありました。

付き添い者への食事対応について、提供が「ない」と答えた病院は18施設で6割を占めました。患者と同じ病院食や付き添い者用の食事(いずれも有料)を「希望すればある」とした病院は13施設でした。

寝る場所については、ほとんどの病院が、「簡易ベッドの貸し出し・各自用意」または「子どもと一緒にベッドで添い寝」でした。

支援策として、17病院が、付き添い者の入浴や買い物などの際、保育士や看護師が子どもの短時間預かりを行っていました。そのほか「付き添い者専用の冷凍庫設置」「月1回の院内体育館の開放」(いずれも北大病院)、「病棟まで売店の移動販売」(天使病院、函館五稜郭病院)など。

条件さまざま

日本の医療制度では、診療報酬上の決まりから、家族の付き添いなしの看護体制が基本となっています。ただ、厚生労働省によると、治療や入院について理解が難しい子どもなどで、医師が許可した場合の「例外的な対応」として、家族の付き添いが認められています。

実際、子どもの入院時に家族に付き添いを求めているかどうかは、病院によって異なります。付き添い不可とする病院や、夜は帰宅を求める病院がある一方、乳幼児の場合は24時間の付き添いを原則とする病院、母以外の付き添いを禁じている病院などさまざまです。

睡眠、栄養不足…過酷な環境浮き彫り
小林・聖路加国際大教授に聞く

入院中の子どもの家族の生活と支援に関する調査研究を行っている聖路加国際大の小林京子教授(小児看護学)に聞きました。

小林京子教授

小林京子教授

――道内アンケートでは多くの病院が付き添いを求めていました。

「付き添いに関する考え方は病院によって違い、『原則、一律に付き添いが必要』から『原則、付き添いは認めない』まで幅広い。ただ、保険診療上は家族の付き添いは不要としつつも、実際は子どもが幼いほど、親の『希望』という建前で、付き添いを求めているという病院は全国的に多いです」

――理由はなんですか。

「子どもの成長・発達には親の存在が不可欠との考えが大きいです。病院という環境下であっても、可能な限り普段に近い『生活の場』として過ごすことは、子どもにとって重要な意味があります。一方で、子どもは体調の変化をうまく伝えられなかったり、ベッドからの転落などのリスクがあります。ですが、看護体制は大人と変わりません。親の見守りなしに、きめ細かな看護は難しいという病院側の事情もあると思います」

――昨年、全国の付き添い経験者千人にアンケートしましたね。

「回答した1054人のうち、3カ月以上の長期入院をしていた人が2割いました。付き添い入院中の生活について聞いたところ、『栄養不足だった』と『寝不足だった』と答えた人はいずれも8割、『体調を崩した』と答えた人も5割にのぼり、過酷な生活環境がうかがえました。付き添いのために仕事を休んだり、辞めるなどして『経済的な不安があった』と回答した人も半数を占めました」

子どもの入院に付き添う家族の生活実態調査

――何が求められますか。

「患者ではない家族の付き添いは、これまであまり問題化されてきませんでした。しかし、体調面だけでなく、仕事を辞めなければならなかった家族も実際にいます。まずはこの現状を社会全体が認識することです。子どもの入院に親が付き添っても、仕事上で不利益を被らないような社会制度が必要です。そして、看護師や保育士などの人数を増やし、家族が付き添わなかったとしても安心して預けられる医療体制が求められます」

取材・文/根岸寛子(北海道新聞記者)

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