連載コラム「晴れときどき子育て日和」第9回

きっと夫も子育てしたいんだ 一緒に漫画を読む姿にほっこり

つい先日、夫が漫画本を買ってきました。「ドラえもん」と「ONE PIECE」を1冊ずつ。珍しい買い物に「はて、なんだろ?」と思っていると、息子が寝る前に嬉しそうに取り出し、「ねぇねぇ、これ一緒に読まない?」。ドラえもんの「ぼくの生まれた日」というエピソードを読んで一緒にボロボロ泣いていました。その姿が何ともかわいらしく見えて…。

そう言えば最近、夫と息子で共有するものが増えてきました。車マニアの息子のこだわりを知り尽くしているのも、釣りに誘うのも夫です。格闘技を見て盛り上がったり、キックボクシングの練習が白熱していたり…。好きなものはとことん突き詰める似た者同士、彼らにしか共有できない世界があるようです。

息子が赤ちゃんだった頃は、こんな日を想像することすらできませんでした。猛烈なママっ子で、私がシャワーを浴びるほんのいっときでも夫が抱っこするとギャン泣き! 100%母乳だったので、抱いてあやせないとなるともう、夫はほとんど役に立たない(笑)。育児のほぼ全てを私が引き受けるしかありませんでした。その結果、私は「疲労」を募らせ、夫は「孤独」を募らせていたのです。そう、これがよく聞く、産後クライシス。

疲労困憊の妻に「夫の孤独を理解してあげて」なんて言っても、たいていは「はぁ? 孤独なんて言ってる暇あったら手伝ってよ!」と一蹴されてしまうでしょう。私もずっとそう思ってきました。

でも、嬉しそうに読み聞かせしている夫を見て、じんわりと心が温かくなり、こう思ったのです。「あぁ、私が仕事をしたかったように、この人もずっと子育てがしたかったんだな」と。そして、「もしかしたら、夫から育児の機会を奪っていたのは、私だったかもしれないなぁ…」と。

新米ママだった私にもう少し余裕があれば、あんなに1人で抱え込まずに済んだのかもしれません。ギャン泣きする息子に「まぁまぁ落ち着いて。この人はあなたのお父さん。おっぱいは付いてないけれど、優しい人よ。私もお父さんも、あなたを愛してるのよ」と根気よく伝えることだってできたかも。そして、私がもう少し育児の責任を手放していたら…? 夫と息子はもっと早く信頼関係を築けたかもしれない、と思うのです。

今年5月に出版された前田晃平さんの「パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!」(光文社)という本が、とても印象に残りました。いま男性の育休取得が進んでいるのは「時代の変化」なんていうぼんやりした理由じゃない。何十年にも渡って社会から切り離されてきた女性、家族から遠ざけられてきた男性たちの思いがようやく時代を動かした、という内容です。

そう、きっと男性だって子育てがしたい。社会も、そして、それぞれの家庭の中でも、その喜びを奪ってはいけないのだと今は感じています。夫と息子の会話は、「ONE PIECEの悪魔の実がどーであーで」と、今の私にはわからないことばかり。でもそんな風に「わからない」が増えていくのもまた、私の喜びの1つになっていきそうです。

谷岡碧さん

たにおか・みどり/2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成。21年春から、主婦と生活社の女性向けサイト「CHANTO WEB」でライターとしても活動中。夫と小学1年生の長男、2歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。

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