働きながら、夫婦で育児の負担や悩みを分かち合うには?

写真はイメージ(takeuchi masato / PIXTA)

育児休業を終え、子どもの保育園入園に合わせて職場復帰する子育て世代が多い季節。働きながら、夫婦で育児の負担や悩みを分かち合うにはどうしたらいいのでしょう。スマートフォンのアプリで情報を共有して育児や家事を分担したり、毎月「夫婦会議」を開いて話し合ったりする事例から考えました。

アプリで情報共有し分担

ピラフ、カボチャの煮物、薄焼き卵…。札幌市の団体職員田川清彦さん(31)がスマホのメモアプリを開くと、43種の離乳食のリストとレシピが並んでいます。妻(34)が作成し、互いのスマホで共有しています。

どちらかがリストの離乳食を作り、冷凍保存するとチェックを入れ、長男(1)が食べたらチェックを外しています。「チェックの量で妻の負担の多さが一目で分かるので、僕は家計管理や掃除などの得意な家事を担い、バランスを取るようにしています」と田川さん。

昨年8月、団体職員(当時)だった妻が育休を終え職場復帰。田川さんも6月から3カ月間育休を取り、離乳食作りを始めました。買い物リストや互いの予定もアプリで共有し、毎月結婚記念日の「13日」は、ケーキを食べながら育児や家事の進め方を話し合っています。

夫婦で共有する離乳食のリストをチェックする田川清彦さん

夫婦で共有する離乳食のリストをチェックする田川清彦さん。どちらかが作り、冷凍保存すると黄色いチェックマークを入れている

自宅のホワイトボードにも、古新聞の片付けや郵便物の整理などの家事を書き出し、どちらかがやると消しています。田川さんは「見えるところに書いてあると、体が動きます」と笑います。

こうした育児と家事の「見える化」で、夫婦の分担を進めるためのアプリもあります。デジタルコンテンツ開発の「フラップ」(東京)が開発した「Yieto(イエト)」。

「おむつ交換」「保育園に出す書類づくり」「食事の下準備」など130項目をリストアップし、どちらが担っているのかを、夫は「青」、妻は「赤」で表示。負担のバランスが画面に色で示されます。

アプリは無料で、2017年のサービス開始から、5万3千回ダウンロードされました。フラップ社長の小沼光代さん(42)は「ユーザーから『夫が思ったより育児を頑張っていると分かった』『妻の仕事量に頭が下がった』など互いを評価する声が届くことが多いです。負担の偏りの見直しにつながってほしい」と話します。

毎月「会議」開き話し合う

子育てに支え合いが必要なのは、乳幼児を抱える夫婦だけではありません。中学3年の息子と小学5年の娘を育てる小樽市の看護師佐藤真妃さん(34)は、夫の会社員隆将さん(34)と月1、2回、子育ての方針などを話し合う「夫婦会議」を開いています。議論の内容は専用のノートに記録し「笑顔で終わる」のがルールです。

真妃さんは5年前、2人の子を連れ、再婚しました。隆将さんは子どもたちの勉強の指導や相談役を担い、学校からの書類にも目を通しますが、真妃さんに遠慮して子育てへの意見を言えずにいました。察した真妃さんが昨年末、夫婦会議を提案しました。

隆将さんは、子どもたちの真妃さんへの言葉遣いが乱暴なのが気になっていました。「母親は、敬うべきだ」と注意しても、なかなか直りません。隆将さんは会議で、真妃さん自身の母親に対する言葉遣いが影響していると助言し、親子の関わり方をじっくり話し合いました。

「夫婦会議ノート」を開き、議論の記録を振り返る佐藤隆将さんと、妻の真妃さん

「夫婦会議ノート」を開き、議論の記録を振り返る佐藤隆将さんと、妻の真妃さん

「子どもは親の機嫌に敏感。両親の考えが違うと、それぞれの前で態度を変え、その行動が親のストレスになります。夫婦が、子どもの育て方を一緒に考えることが、互いの負担や悩みを減らし、子どものためにもなります」と真妃さんは言います。

夫婦会議は、出産を機に夫婦がすれ違う産後危機を経験した長廣百合子さん(37)=福岡市在住=が、夫の遥さん(44)と提唱し、専用ノートを開発。1万2千組の夫婦が実践しています。

百合子さんは「迷惑をかけたくないという遠慮、言わなくても分かるはずという過信、どうせ他人だから分かり合えないという諦めが、育児の負担を偏らせる。夫婦で話し合うことが、見直しの第一歩」と話しています。

子育て女性6割が「負担」
全国8千人に調査
男性の意識改革求める声も

子育て支援アプリを運営する「コネヒト」(東京)が2020年に行った調査によると、子どもを持つ全国の既婚女性約8千人のうち、育児に身体的負担を抱えていると答えた人が66%、心理的負担を抱えていると答えた人が61%に達しました。

依然として育児が女性の負担となっている現状について、札幌市の育児休業経験者らでつくる「パパ育休プロジェクト」の藤村侯仁=きみひと=さん(47)は「男性が帰宅を早めるなど、育児優先の生活にする意識改革をしなければ負担は妻に偏る」と指摘。「男性の育休取得を企業が進め、夫婦のための教室を開くなど、仕事と育児を両立できる体制を整えるのが大切」と話しています。

取材・文/佐竹直子(北海道新聞記者)

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