企業主導型保育所、保護者・設置者ともメリット拡大

暗がりの中で「お昼寝」する園児と、見守る保育士=こどもプラザ青い鳥二十四軒園

暗がりの中で「お昼寝」する園児と、見守る保育士=こどもプラザ青い鳥二十四軒園

待機児童の解消を目標に国が2016年度にスタートさせた「企業主導型保育所」。当初は手厚い補助を当て込んだ参入が相次ぎ、ずさんな運営が問題となったケースも少なくなかったのですが、参入条件を厳しくしたり、自治体への報告を義務づけたりなどして改善が進み、預け先として検討する保護者が増えています。

「認可外」でも助成手厚く、要員や設備が充実

正午を回った園舎内。窓にカーテンがひかれた暗がりの中でお昼寝する0~4歳児を、複数の保育士が見守ります。札幌市西区の企業主導型保育施設「こどもプラザ青い鳥二十四軒園」の山崎かおり園長(57)は「園庭もありますが、冬場は近くの二十四軒公園、夏は(離れた)農試公園まで足を伸ばすことがある」と、外遊びの活発さをアピールしました。

二十四軒園には現在、0~5歳児57人(定員60人)が在園し、山崎園長ら保育に当たる13人全員が保育士の資格を持っています。保育時間は午前7時から午後6時で、午後7時までの延長保育も行っています。

企業主導型保育所について、内閣府は「単独の企業や地域の企業が共同して設置する施設に整備や運営費の助成を行う」としています。四つの形態=図参照=があって、二十四軒園のように保育事業者が設置して企業と連携する方式のほか、単独または複数の企業が共同で設置し、従業員の子どもを預かる方式などがあります。

認可外施設ですが、手厚い助成で保育士をはじめとする要員や、設備を充実させることができるところが利点となっています。認可外のため、入園に際して、保護者の就労や疾病などを踏まえて市町村が入園を決める保育調整もありません。

なお、企業が設置主体ではあるのですが、設置や提携している企業の従業員の子ども以外も、「地域枠」で入園することができます。二十四軒園では、保護者が子ども・子育て拠出金を負担する企業に勤務していれば「企業枠」で入園できます。一方で、公務員など拠出金を負担していない職場の場合は「地域枠」となります。地域枠は最大で定員の半数。二十四軒園にも地域枠の園児が16人います。

当初は不正多発、制度改善が進み有力な選択肢に

保育無償化対象外の家庭(住民税課税対象の家庭)の保育料(0~2歳児)は園が設定することができます。二十四軒園では、企業枠3万3千円、地域枠は3万5千円。所得が高いと認可保育所より負担は少なくなる場合もあります。

運営法人代表取締役の福田敬子さん(66)は「行政への報告などにあたる連携推進員や、保育士の業務軽減のための保育補助者を雇用するための助成もあります」と話し、「保護者も収入によっては保育料負担でメリットがあります」と強調しました。

企業主導型保育は当初、施設整備費の水増しなどによる不正受給が全国で起きました。長年、認可外施設を運営してきた福田さんは「参入要件に5年以上の事業継続が組み込まれたことなどで、悪質な業者の参入は防ぐことができるようになっています」と説明してくれました。

二十四軒園に2歳女児を預けている女性(27)は「入園前に認可保育所も見学したが設備などで差を感じなかった。自分たちにとって保育料負担も重くはないということも選ぶ理由になった」と話してくれました。

取材・文/弓場敬夫(北海道新聞 くらし報道部編集委員)

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