連載コラム「晴れときどき子育て日和」第5回

親子で盛り上がった大統領選 「ワクワクしない」日本の政治

去年秋、わが家はとても盛り上がっていました。11月に投票が行われた、アメリカの大統領選挙をめぐってです。

息子の親友のゆきまくんは、お父さんがアメリカ人。「ゆっきーのパパは、日本にいても投票できるのかな?」と言い始めたことがきっかけでした。郵便投票を済ませたと分かると、急に身近な出来事だと感じ始めたようです。ニュースを見ながら二人の候補の政策の違いなどを簡単に説明すると、息子は自分なりに考えて「バイデンさんを応援する!」と決め、わくわくしながら結果を待ちました。

そこからの展開は、エンターテイメントとも言える面白さでした。予想通り、開票当初はトランプ大統領が優位に立つ「赤の蜃気楼」現象が起き、間髪を入れず勝利宣言が行われました。その夜は日本の大手メディアも「トランプ強し」という論調でした。しかし郵便投票の開票が進むにつれてバイデンさんの優勢が明らかになり、目が離せない接戦に。

バイデンさんの勝利演説を伝えるABCnewsの生配信には、親子で釘付けでした。

カマラ・ハリスさんの「私が最初の女性副大統領になるが、私が最後ではない」というスピーチは、やはり感動的でした。続いて軽い足取りで登場したバイデンさんは、マスクをつけた多様な人種が入り乱れ、涙を流して喜ぶ様子を前に「私は分断ではなく、結束を目指す大統領になることを誓います。赤でも青でもなく、私が目指すのはひとつの合衆国です」。私が一生懸命訳するバイデンさんの言葉を聞いた息子は、ポツリと言いました。「じゃあアメリカは『紫のアメリカ』にならなきゃいけないってことだね」と。

ハッとしました。テレビの報道記者だった私は息子に社会情勢を「教えよう」とし、「難しい話をしてもたぶん分からない」とも思いがち。社会的な話題から子ども息子を遠ざけずに感想を共有することで、大人の側が新鮮な視点をもらう機会にもなりました。後の就任式で、ハリスさんや元ファーストレディたちが紫の服で融和をアピールした時には「はるのアイデア、採用されてる」と息子は大得意でした。

しかし! 「なんか、ワクワクしない」と、今年1月の菅総理の施政方針演説には1分で飽きてしまった息子。「日本の政治だって、子どもが興味持てるように工夫すればいいのにね。子どもが『見たい!』と思えば、親だって興味持つのに」。おっと。社会的な話題を提供するのも、すでに親の側だけじゃないようです。

谷岡碧さん

たにおか・みどり/2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成して活動中。夫と小学1年生の長男、2歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。

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