笑いと歌で ママ応援 2児の母 バブリーたまみさん

バブル全盛期のファッションで子育て世代を盛り上げるバブリーたまみさん/本人提供

コロナ禍で出産後の「産後うつ」のリスクが高まるなか、母親たちを笑いと歌で応援する自称ママ界のエンターテイナー、「バブリーたまみ」さん(32)=本名・箕輪珠実、東京都在住=が子育て世代に注目されています。たまみさんは、2児の母で自身も産後うつの症状に苦しみました。親子向けイベントなどを開いては、80年代風の衣装でコミカルなパフォーマンスを披露。母親たちに「自分を犠牲にしないで」と、メッセージを送っています。

産後うつの苦しみ、乗り越え

ソバージュヘアに太い眉。分厚い肩パッドのスーツを身にまとい、手には羽根の扇子。親子向けイベントで、たまみさんは歌に合わせて肩パッドに手をあてる遊びやディスコの「お立ち台」で踊る姿をイメージしたベビーマッサージを披露し、会場は笑いが絶えません。

一転、オリジナルのバラード曲「ママ、いっしょに幸せになろうね」を歌うと参加者の目には涙。悩みを吐きだし、自分を大切にするように呼び掛ける歌詞は、昨年4月、コロナ禍でイベントを休止し、長男と自宅にこもっていた時期に書きました。当時、次男を妊娠中で情緒不安定でもありました。

「もともとは、コロナで落ち込んだ自分を励ますつもりで作った曲」と、たまみさんは笑います。1月下旬のオンラインイベントには全国の親子約90組が参加。インスタグラムでもほぼ毎日、ライブ配信し、フォロワーは4万7千人に上っています。

オンラインイベントには毎回、100組近い親子が参加する/本人提供

オンラインイベントには毎回、100組近い親子が参加する/本人提供

コロナ禍が長引くにつれ母親たちからは「子どもに手をあげてしまい、泣きながらメッセージを打ってます」「産後うつが治る自信がない」など、深刻な悩みが増えました。

「育児も家事も1人で抱える人ほど苦しくなる。誰かに助けてもらおう。できなくてもいい」。そう伝えようと、ブログで育児や家事の失敗談も紹介しています。ファンの一人、札幌市で広告業「MamaLady」を営む明石奈々さん(31)は1児の母。「彼女の発信に、この気持ちは自分だけじゃないと励まされ、笑えて泣けて、救われます」

活動は2017年12月、友人の結婚式で披露した80年代風ダンスが始まりでした。当時、長男は1歳4カ月。なじみの子育てセンターでも踊ると、母親たちが笑い、たまみさんも楽しく感じました。「ママがみんなで笑えることをしよう」と決意。バブリーたまみの姿で、育児イベントを始めました。

時には「ハイレグ」姿も披露する(左端)/本人提供

時には「ハイレグ」姿も披露する(左端)/本人提供

長男を出産後は、育児の重圧で涙が止まらず、吐き気や動悸、めまいに襲われ、長男を「怖い」と感じたことも。産後うつの症状でした。独身時代は中国の日系企業で働き、中国全土を駆け巡っっていました。結婚で転職しましたが、育児休暇で社会と離れ孤独でした。子育てがうまくいかず自己嫌悪にも陥りました。

たまみさんは8歳の時、母が失踪し、父と祖母に育てられました。「母の実像を知らず、理想の母親を自分に求めすぎた」と振り返ります。

目標ができると、うつの症状は治まり、気持ちが軽くなりました。18年3月に退職。バブリーたまみに専念しました。

家庭では2児の母のバブリーたまみさん(左端)/本人提供

家庭では2児の母のバブリーたまみさん(左端)/本人提供

今も、次男の夜泣きなど育児の苦労は続いていますが、今年はコロナの状況を見守りつつ、各地でのイベントを再開することが、目標です。「子育て世代が笑顔になることが、子どもの幸せと、命を守ることにつながる」。たまみさんは、そう信じています。

バブリーたまみさんのイベント情報などは、ホームページ(https://www.bubblytamami.com/)参照を。

道内初産婦 3割うつ傾向
通常の3倍リスク高く

筑波大の松島みどり准教授(医療経済学)と育児アプリを開発する「カラダノート」(東京)などがコロナ下の産後うつのリスクを調べたところ、道内は、初産婦のほぼ3割が産後うつの傾向が高いことが分かりました。

調査は、産後うつの選別法「エジンバラ産後うつ病質問表」を使い、2020年10月にインターネットで実施。全国の3861人が回答しました。

このうち、道内で「うつ傾向が高い」と判定されたれた初産婦は29.3%。全国を五つに分けた地域別で最高でした。産後うつは、出産後の母親の約10%が発症するとされており、産後うつのリスクが通常のほぼ3倍に増えた格好です。

産後の経産婦で「うつ傾向が高い」と判定されたのは、道内は14.3%。全国5地域で最低でした。

調査は20年6月にも行われ、道内産婦のうつ傾向は首都圏に次ぐ高さでした。

取材・文/佐竹直子(北海道新聞記者)

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