#4|「わたしはおかあさんのあい」 なりきり作文が息子を変えた
2021/01/27写真提供/谷岡碧さん 「晴れ ときどき子育て日和」#4
札幌市で朗読活動を行い、2018~19年に北海道新聞で「絵本はママを育ててくれる」を連載していた谷岡碧さんが、2人の子どもの母となった日々を綴ります。(バックナンバーはこちら)去年、小学校に入学した長男・遼(はる)。繊細で個性の強い息子はすぐに違和感を口にするようになりました。「なぜみんなと同じことをしないといけないの?」
うーん…これは困ったことになったぞ。私が返答に困っているうちに、学校での息子の態度は頑なに。「みんなの描いた絵でどれがいちばん良い?」と言われても「良いと思う絵がない」。図工で先生にアドバイスされても「シンプルなものが好きだから」。「楽しかったことを発表しよう」と言われても「楽しいことなんてない」。
毎日怒られてますます落ち着きをなくす悪循環が生まれ、ある日ついに恐れていた言葉が。「もう学校なんて行きたくない!!」
小さな疑問を胸に、目に見えて自信を失っていく息子。親として真正面から答えなくてはいけない時が来たと感じました。
翌朝、たくさんの写真を並べて見せました。黒柳徹子さん、本田宗一郎さん、水木しげるさん、岡本太郎さん。「この人たちね、みんな普通の学校には馴染めなかったんだよ。でも素晴らしい個性があって、それを生かした仕事に就いた。お母さんは『みんなと同じことをしたくない』っていうはるの感覚は間違っていないと思う。だから自分を『悪い子』だなんて思わないでね。はるには素晴らしい個性があるし、必ずそれが生かされる日がくるから」。その朝、息子はポロポロと涙をこぼしました。
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変化のきっかけは、ある日授業で出た「なりきり作文」という課題。休み時間を削り、「車のエンジン」や「自分の指にとまったトンボ」になりきってたくさん書いてきました。その中に、こんな作文もありました。
「わたしは おかあさんの あいです。わたしは はるくんが だいすきです。おとうさんと けっこんしています。はるのいもうともだいじです。じぶんのじんせいよりだいじです。はる だいすきだよ」
「愛」になりきった作文には大きな大きな花丸と、「なんてすてきなんでしょう」という先生の言葉がありました。
息子はこの日初めて、学校という場で自分を表現できたのかもしれません。その日を境に先生とコミュニケーションが深まり、褒められることが増え、「学校ってけっこう楽しいかも」なんて話すようになりました。
「順調」も素晴らしいけれど、子育てにおける回り道は、たいていこんな素晴らしい学びに満ちていて…。遠回りする道の途中の景色を楽しみつつ、子どもたちの背中を見守っていきたいと思っています。
PROFILE
谷岡 碧(たにおか・みどり)
2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成して活動中。夫と小学1年生の長男、2歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。最新の記事
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