連載コラム「晴れときどき子育て日和」第3回

コロナで父の会社が大ピンチ 私も夫も「チーム」のメンバー

来年70歳になる父は、「目に入れても痛くない」という言葉通り私を可愛がってくれました。名付けてくれたのも父です。「碧色は、青と緑が混ざった色。お父さんがいちばん好きな海の色だよ」。私はこの話が大好きで、幼い頃から「私の名前、かっこいいじゃん」なんて思っていました。趣味でも仕事でも常に挑戦する姿に刺激され、運動音痴の私がトライアスロンに参加したのも良い思い出です。

父は、札幌で60年以上続く「封筒屋」を営んでいます。30代で家業を継ぎ、医薬品を入れる「薬袋(やくたい)」を主力に切り替え、事業を大きくしてきました。毎朝6時30分に出社してトイレ掃除をするのが日課。それほど会社を愛し、誇りにしているのです。

しかし3年前、筋無力症という難病が降りかかり、大手術も受けました。自由に、活動的に動くのが難しくなり、もどかしさにたびたび落胆しながらも少しずつ折り合いをつけていく様子をそばで見てきました。

さらに今年は、会社にコロナウイルスの波が襲いかかりました。病院の受診控えが広がり、薬袋の需要も激減したのです。

そんな中、社員から「薬袋をマスクケースに転用できないか」というアイデアが出ました。飲食店でマスクの置き場所に困ったのがきっかけだったそうです。社員一丸となってすぐ試作品が完成。「ピンチをチャンスに変えよう!」と社内の雰囲気が変わりました。

皆のまっすぐな思いに私と夫も心を動かされました。Web広告を仕事とする夫がデザインを提案し、ECサイト「薬袋から生まれたマスク入れ」を制作。文章は私が担当しました。ケースも改良を重ね、夏にはECサイトで販売を始めたのです。

いまは道内の旅館、東京やバンコクの美容室、ロシア、中国などで使っていただいています。薬袋の製造減を埋めるには至っていませんが、社員の士気を上げ、家族がチームの一員になる機会も与えてくれました。

私の子どもたちは、おじいちゃんの会社に行くのが大好き。息子は廃紙の収集車が来ると、率先してお手伝いします。娘は愛想を振りまいて皆に可愛がってもらっています。

何より、2人ともかっこよく働くおじいちゃんを誇らしそうに見ています。ポジティブなオーラは、子どもも惹きつけるのでしょう。コロナ禍を乗り切り、笑顔で古希を迎えられることが家族の願い。挑戦し続ける背中を、孫たちにもまだまだ見せてほしいのです。

谷岡碧さん

たにおか・みどり/2012年にテレビ東京を退社後、タイへ移住してNGOで勤務。17年に帰国後は札幌へ住み、幼なじみと読み聞かせユニット「エネッツ」を結成して活動中。夫と小学1年生の長男、2歳の長女と暮らす。札幌市出身、36歳。

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