訪問型支援 高まる需要 コロナ禍 孤立や児童虐待予防

自宅を訪れた藤目英子さん(左端)らと遊ぶ子どもたちを、ほっとした表情で見守る西森菜月さん(中央)

新型コロナウイルスの影響で育児に不安やストレスを感じる母親らの相談場所が制限される中、支援団体が出向いて家事や育児を手助けする訪問型の子育て支援事業が注目されています。利用者の中には自宅に引きこもり、産後うつの傾向がみられる人もおり、孤立や児童虐待を予防するのが狙いです。支援団体は「つらい時は助けを求めて」と呼び掛けています。

家事や悩み「助け求めて」

「ブランコやって~」。11月下旬の夕方、旭川市の子育て支援団体「保育サポーター“あいあい”」会員の藤目英子さん(79)が、市内のパート職員西森菜月さん(30)宅を訪ねると、1歳の双子の女児と3歳の男児の3人が抱きついてきました。藤目さんが1人ずつ抱き上げて揺らす「ブランコごっこ」などで子どもたちを遊ばせている間、西森さんは食事の準備や掃除を慌ただしく済ませました。

あいあいは市が8月に始めた家事や育児を支援する「産前・産後ヘルパー事業」を受託し、藤目さんはこの日までに西森さん宅を23回訪ねました。西森さんは「ほぼ三つ子状態で、帰宅して子どもを寝かせ付けるまでの2時間はてんやわんやでした。ストレスで子どもにあたりたくなくて、思い切って支援を頼んでみました」と振り返ります。

事業は10月末までの3カ月間で46人が延べ258回利用。料金は1回(2時間以内)500円で、対象は妊娠中から産後1年未満、利用上限は20回ですが、多胎は産後2年未満まで、利用は上限40回に拡大されます。西森さんは「藤目さんは悩みも聞いてくれ、本当に救われています。頼んで良かった」と話します。

胆振管内白老町でも、民間と行政が連携して訪問型の子育て支援事業に取り組んでいます。町内の「NPO法人お助けネット」の提案で町は2009年、子育て経験者ら4人のチームを発足。19年度は計40回訪問して育児相談に応じ、本年度も11月までに計25回訪ねました。

チームリーダーで法人代表の中谷通恵さん(61)は「自宅でマンツーマンで話す安心感から母親たちが悩みを吐き出し、笑顔を見せる姿を見る度、ニーズを実感します」と話します。

札幌市の「子育て支援ワーカーズべりぃべりぃ」は、14年から独自の訪問型支援の取り組み「菜の花」を続けています。豊平区内を対象に、1世帯4回を上限に無料で訪問。悩みを聞き、公園への外出に同行もします。

6歳と4歳の子を持つ現在西区在住の主婦対馬ともみさん(40)は、下の子が3歳になるまで菜の花を利用しました。「子どもに手がかかり疲れると、怒りたくないのに怒ってしまう。クッションになる人が来てくれると、ほっとしました」と対馬さん。

利用者は高齢出産の母親が少なくありません。菜の花を担当する豊田直美さん(63)は「子育てサークルは若いお母さんばかりで行きにくいからと、子どもと家にこもり、うつ傾向になる人もいる。助けを求めるのは恥ずかしくない。受けられる支援を探してみてほしい」と強調します。

このほか函館市や石狩市、千歳市なども訪問型支援事業に取り組んでいます。また道内68市町村(19年度)が登録者同士で育児を支え合うファミリーサポーター制度を導入し、サポーターが訪問支援を担う自治体もあります。料金や利用対象などの問い合わせは、最寄りの市町村の子育て担当へ。

保護者の半数 行動に変化 外出自粛で「怒りっぽく」
東京のNPO調査 子どもにダメージも

怒りっぽくなった、子どもをしかることが増えた…。新型コロナウイルスによる外出自粛などの影響で、0~6歳の乳幼児の保護者の過半数が、自分の行動が変化したと感じていることが、NPO法人全国認定こども園協会(東京)の調査で分かりました。

調査は5~6月にインターネット上で行われ、全国の6108人(道内197人)が回答しました。

自分の行動が変化したと感じている人は54%でした。その人たちにどう変化したのか複数回答で尋ねると=表=、「怒りっぽくなった」(63%)、「子どもをしかることが増えた」(51%)が多かったです。「子どもをたたいたり、たたきそうになった」(16%)、「子育てが嫌になった」(15%)という回答もありました。

また全体の4人に3人はコロナ禍で子どもとの時間の過ごし方や心身の疲弊などで「困った」と感じており、6割は子どもの変化を感じていました。具体的な変化の内容は「メディアの利用が増えた」「体力が低下」「きょうだいげんかが増えた」「いきなり大声を出す」「突然泣く」「便秘や頻尿、おもらしをする」などでした。

調査結果について協会の王寺直子副代表理事は「母親からのSOSが示され、子どもたちへのダメージも大きいことは否めない」と話し、子育て中の母親らを地域でサポートしていく仕組みをつくるべきだと指摘しています。

取材・文/佐竹直子(北海道新聞記者)

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