Baby&Kid's
  • 2020/09/04

    発達障害 進む「早期療育」

    発達障害の兆候を幼児期に把握し、支援する「早期療育」を受ける子どもが増えています。発達障害の確定診断には、一定の年齢まで発達状態をみる必要がありますが、早期療育は1歳半健診などで兆候を把握した時点で療育を始めることで、症状の改善が期待できるといいます。(酒谷信子)


    幼児期に兆候把握 専門的な対応、支援 

    発達障害は先天的な脳機能の障害。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、限局性学習症(SLD)などがあり、重複することも多いです。ASDは、言葉の遅れが顕著になる3歳頃まで把握が難しかったのですが、近年は1歳半健診で兆候を把握する例が増えました。

    氏家記念こどもクリニック(札幌市中央区)の氏家武院長(児童精神科医)によると、生後6~9カ月に発達する間主観的行動(他者と気持ちを共有しようとする行動など)をみることで、1歳前でも把握が可能な場合があるといいます。就学後に判明することの多いADHDも幼児期から把握できるケースが増えています。

    早期療育は専門知識を持つ保育士や心理士らが児童発達支援事業所などの療育機関で親子に専門的な対応や支援を行い、子どものコミュニケーション力を高めたり、親がうまく関われるようサポートします。道によると、事業所を利用する道内の未就学児は2019年3月で9208人に上り、3年間で22%増加しました。

    札幌市中央区の児童発達支援事業所「たんぽぽ」では2~5歳児を療育しています。8月下旬のある日、発達障害と診断されたり、その傾向がうかがわれる3歳児5人が鬼ごっこをしていました。発達障害の子どもは視覚による学習を得意とする特性があります。鬼役の子は手のイラストを描いた「たっち棒」を持ち、職員から「お友達にタッチしてね」とアドバイスされ、楽しそうに友達を追いかけました。

    このほかトランポリンで遊び、はさみを使う遊びも行いました。「順番を守ることができた」といった小さなことでも、職員がほめるとうれしそうな顔を見せました。不安が強かったり、感覚が過敏だったりする子が多いですが「小さい時からほめられることで、できることが少しずつ増え、自信が付いてくる」とスタッフは話します。

    症状軽くなる事例も

    早期療育の効果について氏家院長は「医学的な実証は難しいものの、効果は大きい。例えばASDはかつて一生治らないと考えられていたが、最近は軽症化する事例が増え、小学生の頃には障害の診断を外れて通院が不要になる人が増えている」と話します。成人後に自立する人の割合は20~30年前の約半数から、現在は9割程度に増えたといいます。

    札幌市自閉症・発達障がい支援センター「おがる」の坂井翔一さん(37)も「幼児期は伸びしろが大きく、同じことを伝えてもより短期間で吸収できる。就学後も物事を学習し、吸収しようとする柔軟性を持つことが多い」と早期療育の効果を認めます。

    幼稚園や保育園の先生が子どもの特性に理解を深め、適切にかかわることも重要です。園に出向いて支援を行ったりする児童発達支援事業所もあります。

    事業所を運営する「コローレ手稲」(札幌市手稲区)は幼稚園や小学校、学童保育所など33カ所へ臨床心理士や精神保健福祉士を派遣しています。菊地良治・代表取締役は「子ども一人一人に合わせた対応の工夫などを助言すると、集団生活にうまくなじめることが多い」と言います。

    「おがる」の西尾大輔センター長は「発達に凸凹がある子どもに対し、親は凹に目が行きがちだが凸という強みもある。周囲が子どもの特性を理解し、本人に合ったかかわりをしてほしい」と期待しています。


    トップ写真説明/コローレ手稲が運営する児童発達支援事業所で、職員と水遊びを楽しむ子ども=札幌市手稲区