子どもをつい叱りたくなる場面でも―「どうしたの?」と問いかけて

「人はつらさや大変さに共感してもらえると、心が元気になる。子どもも同じです」と尾木直樹さん(本人提供)

「人はつらさや大変さに共感してもらえると、心が元気になる。子どもも同じです」と尾木直樹さん(本人提供)

「尾木ママ」としてお茶の間でもおなじみの教育評論家、尾木直樹さんが7月、育児の悩みや戸惑いに助言する「こわい顔じゃ伝わらないわよ~尾木ママの子育てアドバイス~」(新日本出版社)を出版しました。つい叱りたくなる場面でも、「どうしたの?」とまず理由を問う姿勢になると、子どもは安心感を持って成長できることなどを伝えています。尾木さんに話を聞きました。

尾木直樹さん育児本を出版 まず理由聞き共感

――「どうしたの?」という問いかけを、「魔法の言葉」として勧めていますね。

「上司と部下など大人の関係でもそうですが、叱るときは頭ごなしにではなく、まず相手を受け止め、彼らの弁解を聞いてあげて下さい。理由を聞くと、100パーセント彼らが悪いということはなく、たった1パーセントでも『なるほど』と思える理由が必ずある。その1パーセントに『そうだったんだ』『大変だったね』と共感するのがポイントです。理解してもらえると子どもは心が元気になり、少し頑張れる。そこでほめてあげるとベストでしょう。子どもは自信を持ち、成長していきます」

――近年は「叱らない子育て」を実践しようとして、うまくいかず悩む親もいます。

「叱ることも時には重要です。絶対にやってはいけないことをした時などは。ただ、『叱る』と『怒る』は全く違う。感情的に『怒る』のとは異なり、『叱る』は教えたいことを、説得的に話したり諭したりする、とても知的な行為です。時には怒ってしまうこともあると思いますが、その場合は子どもに謝ればよいのです」

――子どもが失敗しないよう先回りする親に対して、「失敗の機会を奪わないで」と書いていますね。

「若木は嵐によって鍛えられる、ということわざがあります。親が忘れ物を学校に届けるようなことは、やめた方がよいでしょう。子どもは失敗してこたえると、失敗を繰り返さないように原因を分析したり、自分の落ち度をみつめて克服していきます。親は『どうしたらいいかな?』と一緒に考えるなど、子どもが失敗から学ぶ過程を丁寧に支えてほしい」

――本の後半では、尾木さん自身の歩みを振り返っています。「人間関係は、負けて勝ち取れ」というお母さまの教えに、影響を受けたそうですね。

「『負けるが勝ち』とは違うんですよ。勝負にこだわるのではなく、まず相手を認め、信頼し、受け入れる。そうすることで穏やかな関係になり、相手もこちらの要求を受け入れやすくなります。子育てで言えば、子どもに勝とうとしないこと。『お母さんの言うことを聞きなさい!』ではなく、まず子どもを認めて、受け入れる。そうすると子どもは気持ちが軽くなり、親の要望にも耳を傾けやすくなるのです」

――子どもがいじめに遭った場合の対処法も具体的に書かれています。道内では6月、男子中学生が部活での人間関係を苦に自殺したとみられる事件が起きました。

「私も報道で知り、記憶に残っています。先生たちは今非常に忙しいのでこう言うと酷かもしれませんが、配慮が行き届かなかったのかもしれません。今の子どもたちは感染対策や学習の遅れの挽回でストレスが大きく、いじめは起きて当然と言ってもいい状況。特別な子でなくても加害者になり得る。特に部活動は学校活動の中でも陰になりがちな部分で、顧問任せでは危険です」

――大人もストレスを抱えていますが、子どもへの配慮が必要でしょうか。

「子どもの方が数倍、大変だと思った方がいいでしょう。大人は他にも居場所や逃げ場がありますが、子どもたちには学校しかない。先生たちも大変な状況ですが、それでもやはり、いじめにしっかりと目配りし、対応していくことがいつにも増して求められています。スマホやタブレットとの接触時間も長くなっているので、SNSでのいじめや性被害が起きていないかにも注意が必要でしょう」

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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