夏休み 知育ゲーム楽しんで

新型コロナウイルスの感染拡大により休校が長引いたことで、今年はほとんどの学校の夏休みが短くなります。人が集まる場所は避けなくてはならず、夏休みの児童や生徒ができる遊びも選択肢は狭まりそうです。そんなこの夏、自宅で家族でも楽しめて頭も使う「知育ゲーム」はお薦めの道具です。国内外のボードゲーム約800点で遊べる札幌市中央区の「かくれがゲームカフェゆこる」の沢村友希店長に、3種類のゲームを推薦してもらいました。


ナインタイル

まずは2人以上で遊べる「ナインタイル」(オインクゲームズ・東京、税抜き2200円)。裏表に絵柄がある正方形のタイルを1人9枚持ち、「お題」が示す9枚の絵の組み合わせ通りに、手元のタイルを並べ替えます。9枚を自由に動かしたり、ひっくり返したり。お題と同じ形にする早さを競います。

ルールは簡単ですが、タイルの裏表の組み合わせを瞬時に判断する必要があり、判断力や記憶力を鍛えられます。対象年齢も6歳以上と幅広いです。

コトバーテル

二つ目の「コトバーテル」(クラグラ・札幌、税抜き2600円)は2人でチームを組み、4人(2組)か6人(3組)の対抗戦で遊びます。カタカナの1文字や濁点などが記されたカードを使い、味方に5文字によるお題の単語を推測してもらうゲームです。

各チームは「ジテンシャ」「ツイッター」などの単語を考え、隣に座った敵チームの人に「お題」として渡します。お題をもらった人は文字カードを山札から引き、限られた手持ちカードから5枚を選んで並べ替え、お題に近づけ味方に示します。

例えば「オントセヒ」はオットセイ、「ジトンリャ」は自転車など。文字カードは50音が2枚ずつと限られており、プレーヤーは想像力を働かせて言葉の音などで単語を推測します。2人とも単語を正解できたチームの勝ち。「分かった時の感覚がすごく楽しい」と沢村さんは語ります。

ito(イト)

三つ目は2人以上で会話を楽しむカードゲーム「ito(イト)」(アークライト・東京、税抜き千円)。このゲームでは自分と他人の価値観の違いがよく分かります。

1から100までいずれかの数字が記されたカードを各プレーヤーが持ちます。数字自体を言わずに、示された「テーマ」に沿って数字を何かに例えて説明し合い、小さい数字からカードを出さなければいけません。

テーマを山札から引いて決め、例えば「中高生が好きな言葉」が出たら、80の札を持つ人は「夏休み」、5の人は「補習」といった具合に、自分の数字を言葉に例えて周りに伝えます。

その後、プレーヤーで自由に話し合ってカードを出す順を決め、一番小さいカードを持っていそうな人から出していきます。全員が数字の少ない順にカードを出せればその回は終了。逆に、自分の手持ち数字より大きな数字が、他プレーヤーから先に出されると減点1となります。減点が3になるとゲーム終了です。

冬が好きな人には「夏休み」は50かもしれないし、「補習」を30くらいと思う人もいるかもしれません。沢村さんは「家族で一緒に遊べば、価値観の違いに気づいて盛り上がること間違いなしです」と話しています。

将棋 藤井聡太棋聖で注目 駆け引きの面白さ

高校生プロ、藤井聡太棋聖の活躍で注目されている将棋は、知育ゲームの元祖とも言える存在です。日本将棋連盟北海道支部連合会の山下弘人副会長(57)は「相手との駆け引きこそが面白さです」と強調します。

古代インドで生まれたゲーム「チャトランガ」がルーツと考えられています。それが世界に伝わり、道具やルールが変化し将棋や中国の象棋(シャンチー)、西洋のチェスになったといいます。

縦横各9マスの将棋盤で、縦に1マス進む歩、縦横に動く飛車など20の駒を駆使して相手の「玉」を取る将棋。自分の一手の先に、相手がどう駒を動かすかを考えます。

その次の自分の手、次の相手の手と、先を読んで想像できる局面は天文学的な数です。それを考えて一手一手を繰り出します。「自分の狙い通りに相手が動けば楽しいし、逆にはめられると悔しい」と山下さんは語ります。

駒の動かし方を覚えたら「とりあえず誰かと指してみて体で覚えよう」と山下さん。慣れてきたら「少し強い相手に挑戦すると上達が早い」といいます。駒や将棋盤に慣れるため、山崩しや回り将棋、はさみ将棋で遊ぶのも楽しいです。最近はスマートフォンなどのアプリでも将棋を楽しめます。山下さんは「夏休みにきょうだいや家族で将棋を始めてみてほしい」と話しています。

社会性 勝利に必要 東京の日本ゲーム協会

ボードゲームの普及活動をしている任意団体「日本ゲーム協会」(事務局・東京)は、「まず、何よりゲームそのものを楽しんでほしい」と強調します。その上で「どうしたら勝てるか、なぜ負けたかを考え、次に生かす必要がある。それを繰り返すことで思考力が鍛えられる」と、教育面の効果もあると認めています。

対抗型や協力型など、ゲームにはさまざまなスタイルがありますが、おのずとルールの順守や他者とのコミュニケーションが必要。同協会は「わがままや独り善がりでゲームを進めると、自分も相手も楽しくなくなることが多い」と例を挙げ、子供にとっては「勝つためには社会性も必要で、結果的に相手の立場や気持ちを考えるトレーニングにもなる」としています。

取材・文/高木緑(北海道新聞記者)

(2020年7月21日付 北海道新聞朝刊掲載記事)

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