家計逼迫、子どもだけで留守番… 母子家庭も悩み切実

新型コロナウイルスの感染拡大により、小中高校の休校が続く道内。母子世帯の子どもの過ごし方や経済状況を把握するため、北海学園大の中囿(なかぞの)桐代教授が行った調査では、母親が収入減や支出増に悩み、子どもだけで留守番をする家庭が小学校低学年でも4割に上る実情が浮かび上がった。

調査は札幌市母子寡婦福祉連合会の東、手稲、豊平の3区母連の会員を対象に3月下旬に実施し、計145人が回答した。

休校中(3月12~19日)の子どもの過ごし方を尋ねたところ、「子どもだけで家庭で過ごしている」が小学校低学年で4割、高学年で6割、中高生は8割弱に上った。「学童保育を利用」は、小学校低学年でも24.2%にとどまり、高学年はわずか2.6%だった。

自由記述では「(休校開始直後に)学童保育が休みだった間、子供だけで留守番させるのが不安だった」(小学校低学年の子の親)、「ゲーム・スマホで生活が不規則になっている。朝食は一緒に食べられず、夜のみ一緒に過ごしている」(高学年の子の母親)など、子どもの生活の乱れやストレスを心配する声が寄せられた。

家計の状況については、3月の収入が前月比で「減った・減ると思う」「ほとんどなくなる」と答えた人は合わせて3割に達し、子どもと過ごすために労働時間や日数を減らしたり、経済状況の悪化により勤務先からシフトを減らされたというケースもあり、減収額が「5万円以上」という人もいた=グラフ=。休校により日中、家で過ごす時間が増えるため「食費や光熱費の支出が増えた」とする世帯も半数に上った。

母子世帯は8割が就労しているが、年間平均就労収入は200万円(2016年度、全国ひとり親世帯等調査結果)と低い水準にある。

各区母連は母子世帯の切実な声を受け、食品や物資を届けるなどの支援を行っている。会員世帯に数千円の現金給付を行った東区母連では「これで灯油代が払える」と喜ぶ母親が多かったという。東区母連の溝江眞紀会長は「子どものケアや昼食・マスクの確保、仕事のことなど、母親たちは今、多くの不安を抱えている。母子が安心して暮らせるよう、社会みんなで子どもを育てる意識を持ってほしい」と話す。

直接届く支援 早急に 中囿桐代・北海学園大教授(社会保障論)

休校期間中の子どもたちの安全な居場所の確保は、喫緊の課題です。保育所は開所していましたが、放課後児童クラブ(学童保育)は一時期、利用できませんでした。また、親の就労時間と開館・閉館時間が合わないなどさまざまな事情から、放課後児童クラブを利用せずに子どもだけで留守番をするケースも多くあります。行政は子育て支援施設に対し、感染症の専門家の指導の下で消毒薬やマスク等をしっかりと手当てし、利用者の声を聞きながら、必要な子が利用しやすい態勢を整えていく必要があります。

たとえ子どもだけで自宅で過ごすのが可能であったとしても、食事や日常の過ごし方をサポートする必要があります。配食サービスや、オンライン授業等を教育委員会や学校、NPO等で早急に整備することが求められます。

今回の調査では、収入減に加え、休校に伴う食費や光熱費の増加がシングルマザーの家計を逼迫(ひっぱく)させていることが分かりました。中には厚生労働省が打ち出した休業補償制度や、休業手当の対象になるケースもあると思われますが、給付を受けるのは企業であるためか、シングルマザーの制度の認知度は低いのが現状です。積極的な周知と、必要な人に直接届く支援が早急に必要です。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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