生まれる前から保活 札幌の潜在待機児童2千人に迫る

保育所の4月入所に落選し、自宅で子供と過ごす札幌市豊平区の女性。「出産時期まで考える保活は嫌だ」と話す

4月1日時点の潜在的待機児童数が2千人に迫った札幌市では、子どもの保育所入所を求める家庭は増え続ける見通しだ。入所を巡る競争は激しくなり、「保活(子供を保育所に入れるための活動)」も、徐々に首都圏並みになってきた。さらに入所に有利な誕生月に子供を産もうとする「生まれる前からの保活」の機運も生まれつつある。

競争激化「有利な誕生月に」

「早生まれは保育所入所に不利。2人目は4月か5月生まれにしたい。嫌だけれど、考えてしまう」。札幌市豊平区に住む女性会社員のA子さん(28)は1歳1カ月の長男を抱きながら、ため息交じりに語った。

長男は3月生まれ。労働基準法で産後8週間は就労できないため、昨年4月時点では0歳児クラスに預けての復職はそもそもできない。札幌市の保育園はどこも定員いっぱいで年度途中の入所は難しく、育休中に唯一のチャンスとなる今年4月の選考で、1歳児クラスに入れようと第3希望まで申し込んだ。しかし全て落選した。

保育所は一般的に、4月の0歳児クラスが最も入りやすい。持ち上がりがないため受け入れ人数がほかの年次より比較的多いためで、札幌の昨年4月の入所倍率は0歳児は1.1倍、1歳児は1.7倍だった。

「4月や5月に産むしかない」―。札幌の子育て世代には、A子さんのような「保活」の機運が生まれつつある。4~5月に出産すれば、次の4月にはまだ10~11カ月児で、枠に余裕のある0歳児クラスに申し込むことができる。保護者は1年近く子供と過ごしながら、体力の回復も図れる。1月や12月に産んだら、4月に入所できたとしても、短期間で復職しなくてはならない。

A子さんは今回、育児休暇を9月まで延長した。ただ、1歳児も4月が最も倍率が低く、今後はさらに入所が難しくなる。「計画的な妊娠ができなければ育児と仕事の両立ができないなんておかしい」と語る。

「生まれる前からの保活」は、首都圏では既に一般的だ。東京都杉並区の会社員の女性(33)は双子の娘(当時11カ月)を昨年4月、認可保育園の0歳児クラスに預けたところ、クラスの大半の子供の誕生日が、4月か5月だった。

この女性も「計画的に出産時期を狙った。3月に生まれてしまったらどうしようと思っていた」と振り返る。

国が打ち出した幼児教育無償化が始まれば、札幌市内でもさらに潜在的待機児童が増える可能性は高い。

札幌学院大の伊藤克実教授(保育学)は「札幌市の保育所定員増の取り組みは評価できるが、待機児童を抱えるそれぞれの家庭に向き合う保育コンシェルジュの導入など、できることはまだある」と話している。(鹿内朗代)

保活

子どもを保育施設に預けるための保護者の活動。保育所を探し、施設を見学したり受け入れ人数を調べたりして、入所を希望する施設を選ぶ。情報収集のため役所の相談窓口を訪れることも多い。首都圏では、入所選考の際に有利になるように、出産時期の調整のほか、パートからフルタイム勤務に就労条件を変更する保護者もいる。

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