• 2020/01/16

    ネット時代の性教育 「プライベートゾーン」知って

    性教育。何をどう教え学ぶかについて、いろいろな考え方がある分野です。性による体の発達の違いや仕組みを知ることを通して、人間について正しい理解を深めるのが性教育―ということは言えるのではないでしょうか。ネット時代における性教育のあり方を考え、新しい動きを紹介します。(鹿内朗代)

    ネット時代の性教育
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     保護者向けに性教育に関する講座を開く活動を続けている元保育士で、3児の母でもあるあおきかなえさん(39)=札幌市=に話を聞きました。

     あおきさんは「性教育は、自分と、大切な人の体を守るための知識を学ぶことです」と、まず強調します。

     性教育を巡っては、欧米と日本との間に考え方の大きい違いがあります。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は性教育の指針「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で、性教育は5歳から始め、小学生では無防備な性交のリスク、中高校生では妊娠の兆候などを学ぶことが重要―などと具体的に定めています。

     これに対し、文部科学省の学習指導要領は、中学校の保健体育で学ぶべき性教育の内容を「身体の機能は年齢とともに発達すること」「こうした変化に対応した適切な行動が必要となること」などと規定し、表現が全体的に抽象的です。

     「日本は性教育の後進国だと言えます」とあおきさんは指摘します。学校や家庭で学べなければ、頼るのはインターネットになり、アダルトサイトに辿り着き、男性目線の暴力的なセックスが正しい形だと思い込んだり、「避妊はしなくても大丈夫」といった誤った情報を得たりすることが懸念されるといいます。あおきさんは「疑問を持った時は学ぶチャンス。さまざまな情報が飛び交うネット時代だからこそ、正しい知識を身につけましょう」と呼び掛けます。

    今、妊娠したらどうか…

     あおきさんは、性教育は「プライベートゾーン」の大切さを学ぶことから始めるべきだと言います。プライベートゾーンは下着や水着に隠れる部分。つまり胸、性器、お尻などのこと。そこは「自分だけの大切な場所」です。見たり、触ったりしてもよいのは自分だけで、誰かに見せたり、触らせたりしない。困ったことがあったら、必ず信頼できる大人に相談する。

     その上で、精通や生理など自分の体を知り、異性の体を知る。性交については、例えば、精子はデリケートで空気に触れると死んでしまうためペニスを子宮の近くまで入れる―などと科学的な出来事としても知ることができれば、「『セックス=いやらしい』というイメージが薄くなります」。その上で、今妊娠したらどうなるかも考える。

     このようにして性教育を学べば、ネット上に裸の写真をアップするなどということは、「プライベートゾーンの決まりに反するいけないことだと考えることができるようになります」といいます。

    保護者も一緒に学んで

     順を踏まえたこのような性教育は今の大人の世代はほとんど受けてきていません。あおきさんは保護者に対しても「本を読んだり、講座に参加したりして一緒に学び、親子で性教育について会話してほしい。まずは家庭で学ぶことが重要です」と話します。

     「中高生は性については保護者とは話しにくいもの。例えば関連する本をそっと置いておいたり、性に関して伝えたいことを子どもに話す際には、『あなたが大切だから話しておきたい』などと前置きしてから話すとよいでしょう」と助言します。

    道徳より具体的な情報を 性教育ユーチューバー・大貫さん

    大貫詩織さん
    大貫詩織さん


     関東地方で活動する助産師の大貫詩織さん(28)は、性教育の動画を配信する性教育ユーチューバー「シオリーヌ」として活動しています。明快な語り口が人気で、チャンネル登録者数は6万人を超えます。

     動画の内容は、出産や生理の仕組みを小学生向けに伝えるものから、コンドームや性交後に服用するアフターピル(緊急避妊薬)の具体的な入手・使用方法まで幅広いです。大貫さんは「命は大切、といった道徳的な性教育よりも具体的に何ができるかという情報が必要とされている」と語ります。

     動画配信を始めたのは昨年2月。感想投稿欄には「親子で見た」「彼女のために、体のことを学べて良かった」といったコメントが寄せられています。大貫さんは「性の知識は安全で豊かな人生を送るために欠かせない」と話します。動画はYouTubeのサイトで見ることができます。

    人気マンガ「生理ちゃん」 男性の無理解ユーモアで

    性を学ぶのにお薦めの 書籍の一部
    性を学ぶのにお薦めの 書籍の一部


     性について学べる書籍をいくつか紹介します。

     幼児期から小学生くらいまでにお薦めなのは、プライベートゾーンの大切さや性的虐待から身を守ることを伝える絵本。「いいタッチ わるいタッチ」(復刊ドットコム)や「とにかくさけんでにげるんだ」(岩崎書店)が読みやすいです。

     小学生から大人まで、知っておくべき体の知識を紹介するのは「イラスト版10歳からの性教育」(合同出版)。かわいらしいイラストの「あっ! そうなんだ! 性と生」(エイデル研究所)では「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」といった質問への答え方も紹介しています。

     小中学生が自分で読むには、いずれもマンガの「知ってる? 女の子のカラダ ポップコーン天使(エンジェル)」「知ってる? おちんちんのフシギ おれたちロケット少年(ボーイズ)」(以上子どもの未来社)、「セイリの味方 スーパームーン 生理なんでもハンドブック」(偕成社)などがあります。

    「生理ちゃん」の一コマ(KADOKAWA 提供)


     高校生以上には、今年、映画化もされた人気マンガ「生理ちゃん」(KADOKAWA)がお薦め。月に1回やってくる生理ちゃんが、生理にまつわる男性の無理解や女性の悩みについて、ユーモアを交えて教えてくれます。大切な人の体を守るため、ぜひ男性にも手にとってほしいです。

    (2020年1月7日付 北海道新聞朝刊掲載記事)


    \北海道新聞朝刊 教育面で毎週火曜日に掲載/

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