お金の大切さ お年玉で教えて 大人のやりくり まず教えて

今年のお正月も子どもたちにとって、大きな楽しみだったのはお年玉。両親だけでなく祖父母や親戚からもらうケースもあって、小学校低学年で4人に1人は総額1万円という調査結果もあります。たまったお年玉をどう扱うか、子どもがお金の大切さを学ぶきっかけにできないでしょうか。

子ども名義の口座開設/欲しい物、親子で確認を

日銀などでつくる金融広報中央委員会が2016年にまとめた「子どものくらしとお金に関する調査」によると、お年玉の総額は小学1、2年生で「1万円くらい」が24.0%と最多。3年生~6年生は「1万円以上2万円未満」が約3割を占め、次いで「2万円以上3万円未満」が2割を超えています。

子どもの金銭教育に詳しい札幌のファイナンシャルプランナーの横井規子さんは、「まずは大人たちが大切なお金をやりくりしてお年玉として渡してくれたことを、わかりやすく教えて」と提案します。祖父母には「何に使ったのか、手紙を書いて改めて感謝を伝えると喜ばれるし、子どもに人や物を大事にする心が育つ」といいます。

お年玉をきっかけに「定額の小遣い制を始めてもいいのでは」と話す横井規子さん

お年玉をきっかけに「定額の小遣い制を始めてもいいのでは」と話す横井規子さん

住信SBIネット銀行が昨年12月に顧客を対象にまとめた意識調査によると、子どものお年玉は「親が全て管理する」が44.9%と約半数。横井さんは「子どもが小学校低学年までは、親が管理していいのでは。ただし、将来の進学や部活動、夢をかなえるためなどの理由を話すことが必要」と強調します。

お年玉を親が管理する際でも、子ども名義の口座をつくることを勧めます。「金融機関にお金を預ける意味やメリットを伝えるいい機会。自分で現金自動預払機(ATM)を操作して入金するようになると残高の数字が増えていく楽しさを感じて、お金を使う時によく考えるようになるのでは」と説明します。

一方で、子どもにとってお年玉は、まとまったお金を手にする数少ない機会でもあり、「どうしても欲しい物があるなら、一つだけ買わせてもいいのでは」と横井さん。小遣い制で子どもが貯金している家庭は「貯金では欲しい物の価格に届かない分の補填(ほてん)にお年玉を利用する使い方もあります」と助言します。 いずれも前提として「本当に欲しいのか」「持っている物で似た物はないか」「家にある物で工夫できないか」「ずっと大切に使えるのか」などを、親子で確認し合うのが肝心といいます。

その上で、実際に買う場合も「チラシを見たり、いくつかの店に行ったりして、同じ物でも店によって値段が違うことや、リサイクルショップを活用して物や環境を大事にすることなどを学んでほしい」とアドバイスします。

春からの小学校の消費者教育 買う前に考える人に

小学校ではお金の使い方をどのように学んでいるのでしょうか。札幌市教委の高梨美奈子指導主事に聞きました。

高梨美奈子指導主事

高梨美奈子さん

5、6年生の家庭科で消費者教育として学びます。民法改正で2022年4月に成人年齢が18歳に引き下げられるのを見越して、今春からの新学習指導要領で「買い物の仕組みや消費者の役割」に関する内容が新たに加わります。これまで中学校で学んだ事柄の基礎を先取りします。

家族が働いて得た収入には限りがあり、お金や物を大切にしなければならないという学習の基本は変わりません。買い物は「売買契約である」と理解させ、困った時に消費生活センターなどの相談機関を利用すること、プリペイドカードなどをお金と同じように扱うことなどが新しい要素です。

大人になって消費を巡る被害を受けないよう、買う前に本当に必要かどうかを考える消費者になってほしい。買った後に十分に活用して最後まで使い切ることを理解するのは、持続可能な社会への対応にもつながります。学校教育で実践する場は、調理実習の材料をグループで買ったり、修学旅行でお土産を選んだりする時などがあるでしょう。

取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)

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