男性の育休取得 理想、夫婦や親子関係にとってプラス/実態、低い取得率「義務化」が議論に

子育てに熱心な男性を指す「イクメン」という言葉が浸透して久しくなりました。現実には育休を取る男性は少なく、理由として「職場の人員不足」「上司、同僚の理解がない」…。社会の意識が変わるのは時間がかかりそうです。こうした現状に政府は国家公務員に取得を促す方針で、自民党の有志議員は取得「義務化」も打ち出しました。男性の子育て参加を進めるには育休義務化しかないのでしょうか。


札幌市内の育休経験者らでつくるパパ育休プロジェクト代表で道職員の清原章生(あきお)さん(34)は3年前の長女の出生と同時に1年間の育休に入りました。2歳上の長男がいて「育児にもっと協力したいと考えていた。長女の妊娠が分かってすぐに育休を取りたいと上司に伝え、同僚にも好意的に受け止められた」と振り返ります。

基本的に清原さんが長男、妻が長女の面倒を見て、家事は特に役割を決めずに手の空いている方が担当。育休を終えて「子育てが大変な時期に協力することで、長い目で見て夫婦や親子関係に絶対にプラスになると思う」と強調します。

「mamatalk(ママトーク)」で、主に子育て世代の母親を対象に行ったアンケートでは、213人のうち85.9%の183人が男性の育休取得に賛成。ママたちが男性の育児参加に期待していることが分かりましたが、清原さんのように育休を取得できる男性は一握りにすぎません。

男性の育児休業取得率の推移

厚生労働省の2018年度全国調査では女性の育休取得率が82.2%なのに対し、男性は6.2%。道の18年度調査によると、道内の男性は3.5%とさらに低くなります。取得期間も厚労省調査では「5日未満」が36.3%と最も高く「2週間未満」が全体の7割を超えています。

住宅メーカーの積水ハウスが全国の小学生以下の子どもがいる男女9400人を対象に調査した「イクメン白書2019」によると、男性が育休を取得しなかった理由は、「職場で育児休業制度が整備されていない」(36.8%)が最も多かったです。次いで「職場が育児休業制度を取得しにくい雰囲気」(27.5%)、「職場で周囲に迷惑をかけてしまう」(25.3%)。職場環境に大きく影響を受けていることがうかがえます。一方、取得した男性の7割超は「満足」と答えました。

男性が育休を取らなかった主な理由

国は20年に男性の育休取得率を13%とする目標を掲げますが、遠く及ばないのが現状です。そこで政府は男性の国家公務員に対して、育休を原則1カ月以上、取得するよう促す方針を固めました。20年度の実施を目指しています。地方自治体や民間企業にも波及させたい考えです。

また、自民党の有志議員による「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」は今年6月、本人の申請がなくても、企業側が促して育休を取らせる事実上の「義務化」などを、安倍晋三首相に提言しました。

議員連盟は「統計上、夫の育児・家事分担時間の多い家庭ほど第2子以降が生まれる可能性が高い」などと訴え、改正育児・介護休業法の21年施行を目標としています。党内に11月5日、「育休のあり方検討プロジェクトチーム」も発足しました。

育休制度に詳しい道教大札幌校の菅野淑子(かんの・としこ)教授(労働法)は、男性取得の義務化について「取得率を上げる一つの方法かもしれないが、なぜ男性だけが対象なのか、きちんと議論することが必要。取得しても現状のような短期間では、育児をするために休むという本来の目的に合っていないのでは」としています。

取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)

育児休業制度

1992年施行の育児休業法(現育児・介護休業法)に基づく制度。原則、子どもが1歳に満たない場合に取得でき、保育園に入ることができないといった事情があれば、2歳になるまで期間を延長できる。育休中、使用者に賃金を支払う義務はないが、一定の要件を満たせば、雇用保険から「育児休業給付」(育休開始から6カ月間は休業前賃金の67%、それ以降は50%)が支給される。

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