子育て、パパも地域も 大阪教育大・小崎准教授 札幌で講演

関西弁でユーモアを交えながら講演する小崎恭弘さん

父親の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」(東京)の顧問を務める大阪教育大の小崎恭弘准教授が10月26日、札幌市内で「笑顔でつながるネットワーク 家族・地域・みんなで子育て」と題して講演しました。小崎さんは父親の積極的な育児参加を促し、地域住民による子育てへの“おせっかい”の大切さなどを訴えました。講演の内容を紹介します。

父親 進んで協力、気遣いを
住民 勇気出し「おせっかい」

ママたちと話していると「子育ては楽しいけれど、ゴールが見えないマラソンのようでつらい時がある」という悩みをよく聞きます。一人で走っていると不安になるから、横で声をかけてくれる人とか助けてくれる人、一緒に走ってくれる人がいてほしい。そんな役割がパパや地域の支援者に求められていると思います。

ゴール設定は人によって異なっても、子どもの年齢による節目はあります、パパには、妊娠から生後1年くらいまでがママの一番大変な時期だと説明しています。ミルクをあげたり、おむつを替えたり、子育てに進んで協力するのが大事。その際、赤ちゃんにきちんと話しかけてパパの存在をアピールすることも忘れないでください。

2歳は、第1次反抗期の「イヤイヤ期」。わがままを言って、どこまで通じるか親を試します。ママにとっては「一度許せば、明日から私の言うことをずっと聞かなくなるのでは」という怖さがあります。その気持ちを分かってあげて、パパが「ちょっと代わろうか」などと気遣ってほしい。一方で、たまには子どもに「今日だけだよ」と、ずるを教えるのもいいかな。

長い目で考えて

好奇心が強くなり、「どうして?」と質問が多くなるのが3歳。夢と現実がごっちゃになった世界観を持っていて、大人のきちんとした答えを求めてはいません。「何で空は青いの?」と聞かれたら、「本当だね。飛行機に今度乗ったら、空に聞きに行こうか」といった感じでいいのでは。

何歳まで医療費が無償なのかなど、自治体によって子育て支援策が違うことも頭に入れておきましょう。長い目で子どもを育てる環境を考えることは大切。ふだんから夫婦間で、こんな子どもに育ってほしいと話し合える土壌をつくっておくのも必要です。

小崎恭弘さん

こざき・やすひろ 1991年、兵庫県西宮市に初の男性保育士として採用され、12年間勤務。3人の息子の育児休暇をそれぞれ取得した。専門は「保育学」「父親支援」など。東大発達保育実践政策学センターの協力研究者として、乳幼児の生活や発達について追跡調査する研究プロジェクトに携わる。講演活動のほか、「男の子の本当に響く叱(しか)り方ほめ方」など著書多数。51歳。

子育てはいつまで続くのでしょう。私は20歳の学生に「自分は大人か子どもか」と聞くことがあります。100人のうち6割は子どもと答え、大人と答えるのは1人か2人。残りはどちらでもないと言う。大人になるために社会の中で必要な経験値を積むのに、昔に比べて時間がかかっているのだと思います。だから私は30歳までが子育てだと考えます。

地域のみなさんには、子育てに困っているママやパパに出会ったら、勇気を出して声をかけるおせっかいであってほしい。ママやパパは、子どもが地域と自分をつなげてくれたと思ってください。みんなが少しずつ負担したり、助け合ったりできる地域社会は、子どもに限らずだれもが豊かに生きていけると思います。

価値観を伝える

また、子どもが将来の生き方を考える時、地域の支援者にも手助けできることがあると思います。大切にしてきた価値観や、どういう生き方をしてきたかを親以外からも伝えてもらえれば、子どもたちは多様性を実感できると思います。

取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)

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