「イヤイヤ期」受け止めて 自我の芽生え、成長の証に
2歳前後から始まり、何をするにしても嫌がる子どもの「イヤイヤ期」。初めて迎えるわが子の反抗期に「泣きたいのは私の方」と、戸惑う親は少なくありません。自分の育て方が悪いのかもと悩む親たちに、専門家は「自立しようとする自我の芽生えと考えて」と、子どもの成長と受け止めるよう呼びかけています。
イヤイヤ期の子どもの母親たちが話し合う「さっぽろ保護者ミーティング」(実行委主催)が3日、札幌市内で開かれました。「家の中ならまだしも、お店などで『イヤイヤ』されると、人目がとても気になる」(手稲区の34歳)、「最近は急に泣きだすなど感情が激しくて、子ども相手に口げんかになってしまう」(中央区の45歳)など、お互いに経験を披露して対処法を考えました。
司会役を務めた札幌市教委教育委員の石井知子さん(33)も7歳の長女のイヤイヤ期を体験した母親。「おもちゃの後片付けは、親が寄り添って遊んでから声をかけると、子どもの反応が変わる」「(子どもが外から家に帰りたくない時は)ご飯食べたらまた来よう、明日来ようと保障する、約束すると効果がある」などとアドバイスしていました。
挑戦したい気持ち 尊重を
イヤイヤ期について「子どもがやりたい、挑戦したい気持ちを尊重して」と話すのは、子育て支援事業を行っているNPO法人「子育て応援かざぐるま」(札幌)の山田智子代表理事。「子どもがしていることを面白いよねと、共感を言葉に出して伝えるのが大切」と言います。
時間に余裕があり、子どもの行動に危険がなければ「自分の思うように経験させることで、自己肯定感などが養われる」といった利点も。時間がない場合は「理由を説明して『ごめんね』と謝って、『あと3回ね』などと妥協点を探る。子どもが理解したら『わかってくれてありがとう』と伝える」ことを勧めます。
イヤイヤ期の子どもに効果のある子育て術の一つとして挙げるのが「小さな選択」。「例えば、ご飯を食べずにぐずる時は『ニンジンとお豆のどっちを選ぶ?』と聞く。子どもは自分が選べることに満足を感じる。どちらを選択しても食事は一歩進みます」
北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センターの川田学准教授(発達心理学)は、「子育ての考え方の切り替えが必要。自分で動けなかった赤ちゃん時代とは違って、言語力は不十分ながら行動力を身につけて育つ過程にある。自分で選びたい、遊びたいという心を認めてあげて」と親に理解を求めます。
「イヤイヤ期は、自分の思いが通らずに“負の貯金”が心にたまり、親の言うことを聞けない側面もある」とした上で、「1週間か2週間に1度でも、十分に時間をつくって一緒に遊ぶことで『自分のためにしてくれた』と心が満たされ、他者へ配慮する心も育っていく」と助言します。
「さっぽろ保護者ミーティング」を企画した松本直子さん(39)は、イヤイヤ期の子どもの保護者らをつなげるグッズとして、「自己主張期応援マーク」入りのキーホルダーも作成。「イヤイヤは子どもの自己主張。子育てに悩む親が孤立しないきっかけになればという願いを込めた。困っているママやパパを見守り、お手伝いをしたい人の意思表示にも利用してほしい」と話します。キーホルダーは1個400円で販売。問い合わせは、松本さんへメール(hancollection2019@gmail.com)で。
取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)
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