豪発祥の「トリプルP」に注目 前向き子育てへ17の技術 「認める」「ほめる」具体的に

写真はイメージ(takeuchi masato / PIXTA)

「トリプルP」と呼ばれるオーストラリア発祥の前向き子育てプログラムをご存じだろうか。育児に悩む親に具体的な子育ての技術を伝える内容で、道内でも札幌などで講座や講演会が開かれている。専門家は「体罰や虐待防止にもつながる手法」と周知活動に力を入れている。


トリプルPが掲げる子育てに必要な17の技術は別表の通り。「建設的な関係をつくる」など10の技術で子どもの問題行動を減らし、「問題行動に対処する」ために七つの技術で対応する。日本での普及を進めるNPO法人トリプルPジャパン(東京)の理事を務める札幌医大の沢田いずみ准教授(精神看護学)に、その技術を解説してもらった。

子どもは安心

「良質な時を過ごす」のは、「長い時間一緒にいなくても、子どもが求めてきた時に家事などの手を休めて短い時間でも対応する回数を増やすと、子どもは『自分を認めてくれている』と安心する」と言う。

「ほめる」時は、よい行動を描写的に知らせるように心がける。「子どもが友達とおもちゃを取り合いせずに遊べた時は『けんかしないで偉かったね』ではなく、『おもちゃを使う順番をきちんと守れてよかったよ』と何が好ましい行動かを伝える」のが大切だ。

沢田いずみ札幌医大准教授

沢田いずみ札幌医大准教授

子どもだけでなく家族で守る決まりをつくるのが「基本ルール」。「『静かに話す』など簡単でいい。守れなかった時は言葉で指摘し、改まったらほめる。大事なのは、子どもに良い行動をするチャンスをつくること」と狙いを説明する。

日高管内浦河町教委の吉村明美主幹は、トリプルPを指導する「ファシリテーター」の資格があり、小学校のPTA研修などで講師を務める。講演ではトリプルPを例に「できて当たり前と思う行動でも、ほめたり認めたりを続けることで、子どもとの関係がぐんとよくなる」と呼びかける。

虐待防止にも

同町内の子育てサークル「ぱすてる」の港道征子(ゆきこ)代表は、活動にトリプルPの要素を取り入れており、「自分たちの経験を話し合い、アドバイスし合うなどして成果があることも。なにより悩みやストレスが解消できる」と語る。

沢田准教授は「子育てに追い詰められると、だれにでも虐待は起こりうる。予防する面からも(トリプルPは)有効な子育て支援だと思う」と話している。

取材・文/安宅秀之(北海道新聞編集委員)

トリプルP

オーストラリアの大学教授らが約30年前に開発した教育支援プログラムで「Positive Parenting Program(ポジティブ・ペアレンティング・プログラム)」の頭文字を取った略。2~12歳の子どもの親が対象で、日本には2005年に導入された。「ファシリテーター」は道内に約100人いて、札幌市や北見市、日高管内浦河町で定期的に講座などが開かれている。

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