• 先生の話に集中できない、座っていられず歩き回る… 「小1プロブレム」抑制力育んで

    写真はイメージ(tabiphoto/ PIXTA)
    先生の話に集中できない、席に座っていられず教室外を歩き回る―。小学校に入学したばかりの新1年生の問題行動「小1プロブレム」。幼稚園や保育園とは全く異なる環境になじめず、不安や戸惑いを感じることが背景にあります。周囲の大人が目配りし、早期に対応することが重要です。

    遊びで鍛える集中力 家では緊張感ほぐす

    「お口を閉じて、手を膝の上に置いてください」。新1年生の教室で、担任が子供たちに語り掛けました。大半の児童がおしゃべりをやめましたが、1人の児童が買ってもらったばかりの消しゴムで遊び続けています。担任や隣席の子供が声をかけてもやめません。この児童の後ろの席の児童も、つられたように話し始めました。次第に教室全体がざわつき始めました。

    小1プロブレムで、よく見られるのが、消しゴムで遊び続けた児童のように「歌いたい」「話したい」「体を動かしたい」などといった欲求を抑えきれずに行動すること。他の学年の音楽や体育などの授業、教室内の掲示物、先生や友人の何げない会話など、学校内のさまざまな出来事がきっかけとなります。前夜は登校の準備をしていたのに、朝になると「学校に行きたくない」と登校を渋るといったケースもあります。

    幼稚園や保育園では、遊びや日常生活を通じた体験的な学びでしたが、小学校では、席に着いて国語や算数などの教科の授業を受けます。こうした学びを巡る環境の変化に、子供の体と心がうまく適応できないことが背景にあります。高学年や中学生の問題行動は、学校や教員への反抗心やストレスが原因であることが多いのとは異なる点です。

    背景

    臨床心理士で北海道教育大の斎藤暢一朗准教授(臨床心理学)によると、叱りつけて1年生をおとなしくさせるなどしても、根本的な解決にはつながりません。叱られることで、子供が「自分はできない子だ」と自己否定してしまうことや「先生は怖い」と強い恐怖を感じることにもつながりかねません。2年に進級して担任教諭が替わるタイミングなどで、抑えつけられていた反動で問題行動が増加。学級崩壊に至るケースもあるといいます。

    斎藤准教授は「小学校に入学すると、先生の指示を聞いたり、待ったりと、自分を抑制しなければならない機会が増える」とした上で「抑制する力を育んでいく必要がある」と指摘します。

    斎藤准教授によると、抑制する力を育むために、効果的なのは遊びを活用すること。例えば「だるまさんが転んだ」。鬼役の子供が顔を背けている時に走り、振り向いた時は立ち止まります。「緊張」と「緩和」を繰り返し体験することを通じて、集中力や抑制力、周囲への観察力などを養えるといいます。「次はどうなるだろう」と、じっと待った後に楽しさや面白さを体験できる読み聞かせをはじめ、ドミノ倒しや料理もお勧めといいます。

    遊びの中で抑制力を鍛える

    朝になると登校をしぶるようなケースには明確な理由はなく、ある種のパニック状態だといいます。斎藤准教授は家庭でできる対処法として「体の感覚で感じる安心感を与えてあげて」と話します。低学年のうちは、体の感覚と気持ち、言葉が必ずしも連動していないため、体の感覚を重視する必要があるといいます。

    例えば、寝る前の10分間、子供の頭や足の裏を心地よい強さでもんであげます。学校のルールに合わせなければいけない緊張感から開放され、リラックス。じっくり眠れるなどの効果があります。もむ強さの具合や心地よさを聞いてあげることも効果的といいます。

    新型コロナウイルス禍で友達と思うように遊べない状況が続いていることもあり、斎藤准教授は「体や心の準備に少し時間がかかる子もいると理解し、あまりせかさず付き合ってあげてほしい」と話します。
    心と体をリラックスさせる

    年長の園児招き交流/授業を15分で区切る 幼小連携、道内各地で

    新1年生が学校生活に早く慣れるためには、地域にある小学校と幼稚園・保育園とが連携を強化することが重要です。子供同士の交流を深めるなど「幼小連携」の取り組みが道内各地で行われています。

    北海道教育委員会は、小学校と幼稚園や保育園の教育を円滑につなぐことを目指し、2019~20年度の2カ年の幼小連携・接続モデル事業を実施。根室管内別海町、富良野市など、道内5自治体をモデル地区に指定しました。

    別海町立野付小(打川真由美校長、74人)では、生活科の授業に近隣の幼稚園の年長の園児を招いて、鬼ごっこや折り紙などの交流をしています。教員同士も年4回顔を合わせ、情報交換をします。教育の継続性を意識し、教育効果を上げる狙いがあります。荒井咲子教諭(37)は「教員同士で行き来することで、幼稚園の子供とも顔を合わせられるし、子供との関わり方の違いも勉強になる」と話します。

    登別市教育委員会は、室蘭市内の小学校8校と室蘭、登別両市内の幼稚園や保育園の管理職、担当教員たちの情報交換の場を設けています。目指す教育などについて相互に理解を深める機会となっているといいます。一部の小学校では、新1年生の授業の時間割を弾力的に運用。いきなり各教科45分の授業を始めるのではなく、15分ごとに区切って科目を変える取り組みも導入しています。

    取材・文/今関茉莉(北海道新聞記者)

    最新の記事

    【育児・子育て】

    Read More

    おすすめの関連記事

消費税の価格表記について

記事内の価格は基本的に総額(税込)表記です。2021年4月以前の記事に関しては税抜表記の場合もあります。