転校の不安、どう解消する? 理由丁寧に説明/親が話聞く姿勢示して

写真はイメージ(よっし / PIXTA)

年度替わりになると、親の転勤などに伴い転校する子どもが多くなる。新たな土地や出会いへの期待を膨らませる子がいる一方で、知らない環境へ1人で飛び込むことに不安を抱くケースも多い。転校生が新しい学校になじむために、親や周囲はどうサポートしたら良いのだろうか。


「転校はもう経験したくないですね」。父親の転勤に伴い2回転校したという札幌の私立大2年、加藤雄貴さん(20)は苦笑する。最初の転校は小学2年生になる時。初日の朝に廊下で待機し、先生の合図で教室に入った。「あれほど緊張することは後にも先にもないでしょう」と振り返る。

同じ集合住宅に住む同級生と友だちにはなれたが、以前の明るい性格は影を潜め「いつも静かに過ごすようになりました」。3年後には2度目の転校を経験。「またなんだ」と落胆したが、この時は当時流行していたカード集めに意図的に力を入れ「遊びを通じて友だちができやすいように努力した」と言う。

北翔大准教授で、小中学校のスクールカウンセラーも務める飯田昭人さん(臨床心理学)は、転校により受ける影響は個人差が大きいものの「人との関わりが比較的得意な子は前向きに乗り越えやすいが、対人関係が苦手だったり、自己肯定感が高くない子の場合は、環境変化がストレスになりやすい」と話す。

心理学的に転校は「転機」の一つと位置付けられる。上手に生かすと本人の成長や発達につながる一方、心の危機に向かう可能性もある。「ただ、基本的には人はどんな環境にも適応できる。あまり構えずに『きっと大丈夫』『何とかなる』という気持ちで転校してください」と助言する。

親はどう関わると良いだろうか。飯田さんは、転校前にまず転校する理由を子どもに丁寧に説明するように勧める。「なぜ転勤が必要なのか」に始まり、単身赴任ではなく家族で引っ越す理由なども説明する。その上で「あなたの安心できる環境を変えるのは悪いけど、頑張ろうね」と伝えると、子どもは「親も頑張るんだから、私も頑張ろう」と思いやすいと言う。

転校後は子どもの話を聞く姿勢を示すことも大切だ。「『緊張した』『あの子は少し感じ悪い』といった思いを吐き出して親に共感してもらえると、子どもはまた次に向かえます」と飯田さん。ただ、食事や睡眠が十分に取れていないようなら「担任やスクールカウンセラーに相談を」と呼びかける。

受け入れるクラスメートや学校側の対応については「組織を活性化するのは『よそ者、若者、ばか者』と言われます。転校生はクラスに新しい文化を持ち込み、良い方向に変えるチャンスにもなる。異なる文化を大事にしようという気持ちで迎えてください」と話している。

札幌市立円山小越野教頭に聞く 受け入れ側笑顔で

転入生を受け入れる学校側は、どんな工夫をしているのだろうか。全校児童約900人に対し、年間100人以上の転入生を受け入れている札幌市立円山小の越野宗丈教頭(50)に聞いた。

越野宗丈教頭

転入生に安心して来てもらえるように、先生たちの笑顔と、子どもたちが「ウエルカム」な雰囲気で迎えることを大切にしています。と言っても、転入生が来る前に特段何か準備をしているわけではありません。普段の授業の中で、新しいものを排除せず、人との意見の違いを受け入れていくことを大事にしています。

周囲の子どもたちは転入生が来ることを自然と「うれしいな」「新しい友だちをつくれる」と受け止めます。でも性格などから、どうしてもなじめない転入生がいた場合は、先生の出番です。

先生が間に入って「○○さんの前の学校では、こうだったんだって」と転入生と周囲の子の会話のきっかけをつくったりします。学習の進み具合が異なる場合は、個別にプリントを出したり、サポーター(補助員)を付けることもあります。

転出していく子も多いです。なるべく具体例を挙げて「あなたはあの時、こんな風に頑張ったよね。この調子でいけば新しい学校でも大丈夫」と自信を持たせて送り出すよう心がけています。

取材・文/酒谷信子(北海道新聞記者)

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